7年の購買データで読み解く!米価急騰で「主食市場」はどう変化したか?

2025/9/18(木)

日本人の食生活に欠かせない主食である米が、2024年夏以降急激な価格上昇を記録しています。
高級米やブランド米の売れ行きが鈍化する一方で、低価格帯の米や備蓄米、輸入米への需要が急増するなど新たなトレンドが生まれています。
また、白米の代わりになる代替食品への関心が高まっており、購買動向にも変化が見られます。
この「令和の米騒動」とも呼ばれる状況は、家庭の食費を圧迫するだけでなく外食産業や食品業界などにも広範な影響を及ぼしています。
本記事では、直近7年間の購買データをもとに、米市場及び代替品カテゴリーのトレンド変化について詳しく掘り下げていきます。

監修

Macromill News 事務局

監修:株式会社マクロミル マーケティングユニット

20万人以上が登録するマーケティングメディア「Macromill News」を起点に、マーケティング知見や消費者インサイトに関わる情報を発信。

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※本レポートの分析データは、15~79歳のモニター(消費者)の購買履歴を対象としています
※QPRの「一般品目」として提供している「JICFSカテゴリー」の商品マスターを使用しています
※本分析の「年度」は8月1日-翌年7月31の期間を示しています

1. 直近7年の「米市場」と「代替品カテゴリー市場」動向

米市場は今、大きな変革の時代を迎えています。
本レポートにおいては、米市場全体のトレンドに着目し米の購買状況や、米の代替品カテゴリーと思われる各カテゴリーの市場トレンド状況を確認していきます。

■分析対象のカテゴリーと、主に含まれる商品一覧

【図表1】本コラム分析対象商品

※赤字は本分析での注目商材

QPRは「JANコードの付与された商品」及び一部専用の「バーコードブック」により、購買情報を取得しています。「バーコードブック」では、JANコードのない商品カテゴリーを扱っており、パン屋などの食パン、菓子パン、調理パンは分析対象に含まれています。米に関しては、量り売りなどのJANコードのない商品は、分析対象外となります。

1-1. 市場ボリュームの変化

はじめに、各カテゴリーの市場ボリュームの変化を確認します。以下のグラフは米市場と代替品カテゴリー市場のボリューム(100人あたり購入金額)の7年間の推移を示しています。

【図表2】米および代替品カテゴリー市場の市場ボリューム(100人あたり購入金額)の推移(2018年-2024年度)

米は特徴的な動きをしており、米離れが叫ばれていた状況を反映し2022年度までは市場ボリュームが縮小しています。2023年度には若干拡大傾向となり、その後2024年度で急拡大している状況です。

【図表3】米および代替品カテゴリー市場の市場ボリューム(100人あたり購入金額)の比較(2018年度および2023年度vs2024年度)

市場ボリュームの推移を比較すると、6年前(2018年度)と直近(2024年度)では全てのカテゴリーにおいて市場が拡大しています。米市場は144.8%と拡大、代替品カテゴリー市場では米飯加工品156.6%、スパゲティ153.3%、冷凍麺151.7%と市場ボリューム拡大が目立っています。
米価格の急騰が起きる前の、前年(2023年度)と直近(2024年度)の比較では、米市場は162.4%と急拡大していますが、代替品カテゴリー市場では米飯加工品114.0%、その他穀物115.3%となっています。食パンに関しては99.5%と若干縮小しており、菓子パン、調理パンを含めて拡大幅は比較的小さい状況です。

市場規模の大きいカテゴリーでは5%程度の拡大に留まっており、特定カテゴリーが代替先となっているのではなく、各カテゴリーを分散して購入している状況となっています。

1-2. 市場ボリュームの変化要因

次に、米市場と代替品カテゴリー市場のボリューム(100人あたり購入金額)の変化を要素に分解して確認します。

■6年前(2018年度)と直近(2024年度)の比較

【図表4】米および代替品カテゴリー市場 インデックスツリー(100人あたり購入金額、購入率、購入者あたり購入金額/2018年度、2024年度)

各カテゴリーを要素に分解してみると下記の状況となります。

(1)購入率(購入者数)が大幅増加(対比110%以上)

(2)購入率(購入者数)が増加(対比100%以上110%未満)

(3)購入率(購入者数)が減少(対比100%未満)

全てのカテゴリーにおいて、市場のボリューム(100人あたり購入金額)が拡大しており、購入者あたり購入金額も増加しています。
カテゴリーにより購入率の増減率が異なっており、米においては102.2%の増加に留まっています。
購入率が大幅増加したカテゴリーは米飯加工品、冷凍麺、シリアル類、減少したカテゴリーは食パン、調理パン、包装餅、その他穀物となっています。

【図表5】米および代替品カテゴリー市場 平均金額比較(2018年度、2024年度)

平均単価の影響を確認すると、全てのカテゴリーにおいて平均単価が増加しており、6年前の単価と比較するとカテゴリーTOTALで123.6%と大きく単価が増加している事が分かります。
特に、米の平均単価が167.9%となっており、他のカテゴリーと比較しても突出しています。

■前年(2023年度)と直近(2024年度)の比較

【図表6】米および代替品カテゴリー市場 インデックスツリー(100人あたり購入金額、購入率、購入者あたり購入金額/2023年度、2024年度)

各カテゴリーを要素に分解してみると下記の状況となります。

(4)購入率(購入者数)が大幅増加(対比110%以上)

なし

(5)購入率(購入者数)が増加(対比100%以上110%未満)

※数が多いため、特徴のあるカテゴリーのみ

(6)購入率(購入者数)が減少(対比100%未満)

食パン以外のカテゴリーにおいて、市場のボリューム(100人あたり購入金額)が拡大しており、購入者あたり購入金額も増加しています。
カテゴリーにより購入率の増減率が異なっており、米においては103.5%の増加に留まっています。
購入率が突出して増加したカテゴリーは、もち麦などが含まれる、その他穀物となっています。
購入率が減少した、包装餅は購入者あたり購入金額の増加により、市場のボリュームは拡大しています。

【図表7】米および代替品カテゴリー市場 平均金額比較(2023年度、2024年度)

平均単価の影響を確認すると、全てのカテゴリーにおいて平均単価が増加しています。特に米は165.4%となっており、他のカテゴリーと比較しても突出しています。
また、無菌パックの白飯(パックご飯)が含まれる米飯加工品も115.7%と大きく増加しています。

1-3. カテゴリー別の金額シェアの変化

前述の通り、前年(2023年度)と直近(2024年度)の比較においては、食パン以外のカテゴリーにおいて、市場のボリューム(100人あたり購入金額)が拡大していることが分かりましたが、ここからは「米市場」と「代替品カテゴリー市場」における、購入金額のシェア変化を確認します。

【図表8】米および代替品カテゴリー市場 100人あたり購入金額構成比(2018年度-2024年度)

購入金額のシェア変化では、主食へかける購入金額を100%とした際の、各カテゴリーの購入割合の変化を確認するものになります。
前年(2023年度)と直近(2024年度)の比較において、米の購入金額シェアは10.21%から15.26%となっており、約5ポイントの伸長となります。その他カテゴリーとして伸長したものは米飯加工品及び、その他穀物のみとなります。特に食パン、菓子パンにおいては購入金額シェアが縮小しており、米価の急騰によって、パンを購入する金額の割合が大きく減少しています。

2. 直近2年の「代替品カテゴリー市場」動向

前述の通り、直近比較においては米市場の急騰により代替品カテゴリー市場に大きな影響を与えていることが分かりました。今回は米市場の影響が大きいため、米を除いた代替品カテゴリー市場に限定し比較すると、また違った視点での確認が出来ます。
ここからは、代替品カテゴリーに限定した市場ボリュームの変化を確認します。

2-1. 代替品カテゴリーの金額シェアの変化

以下の表は、代替品カテゴリーの市場ボリューム(100人あたり購入金額)を前年と比較しています。購入金額シェアの確認により、どのカテゴリーの購入に金額を多く使ったかの割合を確認できます。

【図表9】代替品カテゴリー市場 市場ボリューム(100人あたり購入金額)比較(2023年度、2024年度)

購入金額シェアでは、米飯加工品、冷凍米飯加工品が増加しており、米の代替品としての購入金額シェアを伸ばしたカテゴリーになっています。また、その他穀物は麦(もち麦)などの購入が増えた事も考えらえます。市場ボリューム(100人あたり購入金額)の大きい食パン、菓子パンはシェアを落とす状況となっています。

2-2. 代替品カテゴリーの数量ボリュームの変化

以下の表は、代替品カテゴリーの市場ボリューム(100人あたり購入数量)を前年と比較しています。購入数量ベースの確認により、金額とは関係なく、どのカテゴリーの商品が数量ベースで多く買われたかの確認が出来ます。購入金額シェアとは違い、感覚的には食卓に出るメニューの回数を想定することが可能です。
(注意:数量ベースでは、単品商品でも複数個入り商品でも同じ「数量1」とカウントされます。)

【図表10】代替品カテゴリー市場 インデックスツリー(100人あたり購入金額、購入率、購入者あたり購入金額/2023年度、2024年度)

100人あたり購入数量では、米飯加工品が98.62%と若干減少しており、冷凍米飯加工品は103.42%と増加していることがわかります。スパゲティは105.08%と増加しており金額シェアでは把握できなかった傾向を確認することができ、食卓に登場する回数が伸びたカテゴリーと想定できます。

3. 「米市場」と「代替品カテゴリー市場」のカテゴリー購入金額の動向

ここからは、「米市場」と「代替品カテゴリー市場」の購入金額の変化を「スイッチ分析」により確認します。2期間の購入の有無もしくは購入量変化による流出入状況(ボリュームスイッチ)を把握することにより、流入元の把握、流出先の特定が可能となります。

*QPRのスイッチ分析は、2期間の通期期間でのモニター活動者のみを対象としております。そのため、単年の比較データと若干傾向が異なる場合があります。

3-1. 市場ボリュームのカテゴリー変化(流出入マップでの確認)

■カテゴリー全体の市場ボリュームの変化(100人あたり購入金額)

【図表11】米および代替品カテゴリー市場 市場ボリューム(2023年度、2024年度)
【図表12】米および代替品カテゴリー市場 流出入マップ

スイッチ分析では、「期間1(前期)」と「期間2(当期)」を比較し、購入ボリュームの移動量変化を捉えます。
前期(2023年度)の市場規模(100人あたり購入金額)TOTAL「3,051,927円」が、当期(2024年度)TOTAL「3,308,476円」となっており、市場全体としてTOTAL「256,548円」増加しており、分析範囲対象外(今回は米および代替品カテゴリー以外)からの流入増が、「256,548円」という考え方になります。
米の価格急騰により市場全体の規模が大きくなっており、「分析範囲対象外」(=米、代替品以外のカテゴリー)からの流入が多くなっています。

■米のスイッチ状況

【図表13】米に対する代替品カテゴリーの流出入量(金額)

前期(2023年度)と当期(2024年度)を比較すると、米の購入金額は他の全てのカテゴリーから、流入増となっていることが分かります。このことにより、当期(2024年度)は前期(2023年度)と比較すると、「米」の金額が急騰したことにより、「米」の購入金額が大きく増加し、「米市場」と「代替品カテゴリー市場」にかける購入金額の総額が大きくなり、カテゴリー比較においては、米への流入が顕著に現れている事が分かります。

3-2. 市場ボリュームのカテゴリースイッチ(「流出入概要グラフ・詳細グラフ」での確認)

■「流出入概要グラフ・詳細グラフ」確認ポイント!

■米のスイッチ状況

【図表14】米市場流出入概要グラフ

こちらのグラフから、前期(2023年)と当期(2024年)を比較したときに、米カテゴリーの購入ボリュームの増加が、今回の分析対象範囲である代替品カテゴリーからなのか、それ以外のカテゴリーからなのかが確認できます。

  • 米の市場規模(100人あたり購入金額)が「311,574円」から「505,242円」に増加
  • 前期と当期で継続して購入されている購入量(継続購入量)は「232,699円」
  • 分析対象である代替品カテゴリーへの流出(スイッチ流出)「39,536円」、代替品カテゴリーからの流入(スイッチ流入)「94,618円」と、流入が大きく上回る
  • 分析対象範囲外への流出「39,339円」、分析対象範囲外からの流入「177,925円」と、流入が大きく上回る
【図表15】米市場流出入詳細グラフ

このグラフから、今回の分析対象範囲である米と、代替品カテゴリー内の各カテゴリーとの流出入を確認できます。
今回は、全てのカテゴリーから米への流入増となっており、市場規模も大きい菓子パンからの流入金額が一番大きい結果となっています。

4.まとめ

●米価格の急騰が起きる前の、前年(2023年度)と直近(2024年度)を比較すると、米市場は162.4%と急拡大しています。代替品カテゴリー市場では「米飯加工品」114.0%、「その他穀物」115.3%と拡大。一方で、「食パン」に関しては99.5%と若干縮小し、「菓子パン」「調理パン」ともに拡大幅は比較的小さい状況です。

●主食へかける購入金額を100%とした際の購入金額のシェアでは、米の購入金額シェアは10.21%から15.26%となっており、約5ポイントの伸長となります。その他カテゴリーとして伸長したものは「米飯加工品」及び「その他穀物」のみとなります。特に「食パン」「菓子パン」においては購入金額シェアが縮小しており、米価格の急騰によって、パン類の金額シェアが大きく減少しています。

●米を除いた代替品カテゴリー市場だけに注目すると、購入金額シェアでは、「米飯加工品」「冷凍米飯加工品」が増加しており、米の代替品としての購入金額シェアを伸ばしたカテゴリーになっています。市場ボリューム(100人あたり購入金額)の大きい「食パン」「菓子パン」はシェアを落とす状況となっています。

●購入数量ベースの比較では、金額シェアでは把握できなかった傾向を確認することができます。米飯加工品が98.62%と若干減少しており、冷凍米飯加工品は103.42%と増加。スパゲティも105.08%と増加しており、食卓に登場する回数が伸びたカテゴリーと想定できます。

米の値上がりは、単なる「食材の価格上昇」にとどまらず、生活、経済、社会に広く影響を及ぼします。代替品の需要増加や節約志向の強化、価格改定などのトレンドが顕著になる可能性があり、企業や消費者は、価格変動に対応するための戦略を模索する必要がありそうです。

    監修

    Macromill News 事務局

    監修:株式会社マクロミル マーケティングユニット

    20万人以上が登録するマーケティングメディア「Macromill News」を起点に、マーケティング知見や消費者インサイトに関わる情報を発信。

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    著者の紹介

    石田典弘

    株式会社マクロミル 第2事業本部 アカウントマネジメント部 パネルデータビジネスユニット カスタマーサクセスグループ

    石田 典弘

    2003年株式会社インフォプラント入社、その後マクロミルに統合。カスタムリサーチの運用、QPR(消費者購買履歴データ)」の集計・メンテナンスを経験し、現カスタマーサクセスグループへ異動。年間契約企業様へのQPR利活用促進業務に加え、データ集計業務を担当する。購買データを軸に幅広い業務領域に従事する。

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