国や調査方法によっても『クセ』が出る?意思決定を助ける「単一回答」の読み解き方|東南アジア オンライン・オフライン比較調査(第2回)

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マーケターコラム

公開日:2026/1/28(水)

今回は、「海外リサーチ情報」としてマクロミルが実施した【東南アジアのオンライン・オフライン比較調査】の結果紹介の第2回目です。
この一連の調査では、タイ・インドネシア・ベトナムにおいて、同時期に同じ調査内容を用いて行った調査の結果を比較しながらご紹介します。

第1回目では、現状の東南アジア地域(ASEAN)でのマーケティング・リサーチの方法(定量調査について)や、調査対象の3ヵ国の回答者属性について紹介しました。
今回は、調査での個別の質問に対する回答のうち、「単一選択式質問への回答」(以下、「単一回答」)の結果の一部をご紹介していきます。

なお、調査の結果は実施方法や対象者条件、質問内容などによって大きく異なる場合もありますので、今回の結果は事例の1つとしてご覧いただければ幸いです。

1.自己評価意識

はじめに、自分の価値観・行動について尋ねた質問の結果を比較してみましょう。
ここでは「買物意識」に関する先行研究で行われていた日本での調査項目を用いて(大久保・鷹阪・山田(2021))、タイ・インドネシア・ベトナムの3ヵ国でも質問をしてみました(全10項目)。
この質問は5件法(1.全くあてはまらない~5.とてもあてはまる)で測定し、【図表1】には各項目の「とてもあてはまる」の割合を掲載しました。

【図表1】 買物意識に関する質問における「とてもあてはまる」(Top Box)のスコア

※各国の回答分布に合わせてグラフの軸(%)の目盛幅を調整しているため注意

<評価項目>
(1) 買い物をするとストレスが解消される、(2) 買い物をしていると嫌なことを忘れる、(3) 買い物は本当に楽しい、(4) 買い物をしていると時間が経つのを忘れる、(5) 欲しい物があるかどうか探しているときは本当にわくわくする、(6) 買い物が短時間ですむと大変うまくいったと感じる、(7) 手間や時間をかけずに上手に買い物を終わらせたい、(8) あちこち歩き回らずに買い物が済むと大変うまくいったと感じる、(9) 予想よりも早く買い物が済むとすごく気分がいい、(10) 買い物はできるだけ手際よく済ませたい。         
<有意差凡例(χ2検定)>
*** 0.1%水準で有意、** 1%水準で有意、* 5%水準で有意

これを見ると、タイではオンライン調査回答者のほうが、インドネシアではオフライン回答者のほうが、それぞれ割合が高い傾向です。一方、ベトナムでは比較的差が小さいように見えます。

この点をもう少し詳しく検討してみましょう。先行研究では、因子分析によって項目(1)~(5)は「快楽因子」(買い物自体に楽しさやストレス発散を求める心理)、項目(6)~(10)は「効用因子」(手際・効率よい買物を重視する心理)に強く関連した項目であることが示されています(注1)。

それを踏まえて改めて【図表1】を見ると、タイでは特に「快楽因子」に関連の強い(1)~(5)において顕著にオンライン調査回答者の割合が高くなっており、「効用因子」に関連の強い(6)~(10)については、両調査間でそこまで顕著な差は見られませんでした。ベトナムでは、有意な差になっているものは少ないですが、どちらかというと(1)~(5)はオフライン調査回答者のほうが高く、(6)~(10)はオンライン調査回答者の回答のほうが高いものが多い結果でした。

このように、回答者の特性と質問内容によっても、結果の傾向は若干異なります。

次に、「5.とてもあてはまる+4.ややあてはまる」の肯定回答合計で見たものが【図表2】です。

【図表2】 買物意識質問における「とても+まああてはまる」(Top 2 Box)のスコア

※評価項目・有意差凡例は【図表1】に同じ

【図表2】を見ると、タイでは、項目(1)~(5)についてオンライン・オフライン調査間でのスコア差がほぼなくなりました。一方、(7)(8)のように「効用因子」はややオフライン調査で高めの項目も見られました。
インドネシアでも調査方法間での差は小さくなりましたが、特に「快楽因子」関連の(1)~(5)を中心にオフライン調査回答者のスコアが有意に高い結果でした。
ベトナムでは、オフライン調査回答者のスコアが高い項目が多くなりました

図表1・2とも、オンライン・オフライン調査で全体傾向、すなわちチャートの波形が全く異なるようなことはありませんでしたが、少し自己評価の反応度合いは異なるようです。

2.商品コンセプト評価質問

 次に、商品評価に関する質問結果を見てみましょう。

ここで用いる質問では、仮想の商品として空気清浄機の商品コンセプトを提示し、回答者に【図表3】にある「(1)商品特長がわかりやすい」から「(7)もし空気清浄機を買うなら、この商品に興味がある」までの7つの評価項目について、「1. 全くあてはまらない」~「5. とてもあてはまる」の5件法で評価を尋ねました。

商品評価設問のため、各回答に選択肢の1~5点の点数を与え、その平均得点を各国でオンライン・オフライン調査別に比較してみました。

【図表3】 仮想商品コンセプト(空気清浄機)に対する評価点数の比較

※各国の回答分布に合わせてグラフの軸(点数)の目盛幅を調整しているため注意

<評価項目>
(1) 商品特長がわかりやすい、(2) 機能が優れている、(3) デザインが優れている、(4) 省スペースである、(5) 環境に優しそう、(6) 操作性がよさそう、(7) 空気清浄機を買うならこの商品に興味がある。
※いずれも「1. 全くあてはまらない」~「5. とてもあてはまる」の5件法で聴取し、各回答に1~5点を与えて得点化したもの。             
<有意差凡例(t検定)>
*** 0.1%水準で有意、** 1%水準で有意、* 5%水準で有意

結果を見ると、タイでは2項目が統計的に有意な差がありましたが、それらも含めて全般にオンライン・オフライン調査間での得点差は小さいものでした。

他方、インドネシアとベトナムではいずれの項目でもオフライン調査回答者の点数がかなり高い、すなわち評価が高くなっていました。どちらの国でも、オフライン調査回答者で「とてもあてはまる」というTop Box選択肢を選んだ回答者が、オンライン調査回答者より顕著に高い割合でした。

この結果も、オンライン・オフライン調査で評価の絶対水準は特にインドネシアやベトナムでは一定の差が見られましたが、各項目どうしの関係(チャートの波形)はいずれの国・調査方法でも同様でした。

3.オンライン消費行動(実態把握質問)

第1回の記事で触れたように、オンライン調査とオフライン調査では、調査方法以前に回答者の性質も少し違いが生じます。そこで、回答者の買物やサービス利用に関する質問のうち、特にオンラインサービス利用に関連する項目を取り上げて、結果を比較してみました。

【図表4】は、「ECサイトでの買い物」「動画配信サービスの視聴(有料サービスのみ)」「アプリやWeb経由でのフードデリバリー注文」について、過去3ヵ月での平均的な頻度を尋ねたものです。ここでは「週1日以上」行っていると回答した割合の合計を、各国でオンライン・オフライン調査別に比較してみました。

【図表4】 オンライン関連の消費行動(それぞれ「週1日以上」行った割合)

<有意差凡例(χ2検定)>
*** 0.1%水準で有意、** 1%水準で有意、* 5%水準で有意

これを見ると、タイやインドネシアでは、いずれの消費行動についてもオンライン調査回答者のほうが、「週1日以上」利用する割合がかなり高くなっています
ベトナムでは「動画配信サイトでの視聴」は両調査間で有意な差はなく、「フードデリバリー」も有意な差はありますが、スコア差は10ポイント程度と他の2ヵ国の結果ほど大きな差はありませんでした。

次に、情報接触行動についても見てみましょう。ここでは「ニュースや世の中の出来事を知るために、各媒体をどの程度利用しているか」という質問(「世界価値観調査(WVS) Wave 7」での質問を参考に作成)のうち、「SNSのニューストピック」と「Web上のニュース記事」について、「ほぼ毎日」利用するという回答割合を比較しました【図表5】。

【図表5】 ニュース等を知るための媒体利用行動(それぞれ「ほぼ毎日」利用する割合)

<有意差凡例(χ2検定)>
*** 0.1%水準で有意、** 1%水準で有意、* 5%水準で有意

【図表5】の結果から、タイやインドネシアでは、ニュース等の情報源についてもオンライン調査回答者のほうが高頻度に活用している人の割合が高く、特にインドネシア調査では非常に大きな差になっています。一方、ベトナムではこれらはむしろオフライン調査回答者の割合が高い結果となりました。

こうしたことから、回答者がどのような特性を持っているかについては、各国の公的統計データや、複数の調査を比較するなどして、特徴を把握して調査結果を解釈することが望ましいでしょう。

4.今回のまとめ

今回は主に「単一回答」形式の質問について、オンライン・オフライン調査の結果を比較しました。
単一回答は心理尺度(意識や評価)、あるいは利用頻度や回数・量・金額など様々な実態を尋ねる質問で用いられますので、調査結果に基づく意思決定の混乱を少なくする必要があります。

インドネシアやベトナムでは、オフライン回答者において、自己意識質問や評価質問によってはオンライン調査回答者のほうが「とてもあてはまる」「とてもそう思う」などのTop Box選択肢を選びやすい傾向が見られました。
一方、オンライン消費行動については、タイやインドネシアではオンライン調査回答者のほうが非常に活発でしたが、ベトナムでは差が小さく、むしろオフライン調査回答者のほうが頻度高く行っているものもありました。

このように、回答スコア(割合や点数)の水準は、回答者の属性・生活状況や、調査方法による回答デバイスや調査運用方法(紙・スマホなどの画面、調査員の有無など)の違いによって、回答の選択基準が異なることが生じます。

ただし、この記事では差が大きく見られた内容を中心に取り上げたため、違いだけが強く見えるかもしれませんが、様々な評価項目のレーダーチャートなどを見ても、スコアの「波形」は調査方法によって根本的に異なることはほぼありませんでした。したがって、相対的な比較や構造把握を行う目的には、どちらの調査を用いても異なる結論になることは少ないとも言えるでしょう。

しかしながら、回答スコアそのものの水準は調査方法が変わると大きく異なることも事実ですので、できるだけ実態把握や解釈が無理なく行える調査票設計をする配慮も重要です。

そこで、次回は本シリーズの最終回として、「複数回答」の結果のご紹介と、全体を通じてどのような調査票設計や解釈に気をつければよいかを検討する予定です。

<「東南アジアのオンライン・オフライン比較調査」調査概要>
●調査エリア・対象者、時期
(1) タイ:グレーター・バンコク地域に居住する一般消費者男女20~49歳、2024年1~3月実施
(2) インドネシア:グレーター・ジャカルタ地域(ジャボデタベック)に居住する一般消費者男女20~49歳、2024年8~9月実施
(3) ベトナム:グレーター・ハノイおよびグレーター・ホーチミン地域に居住する一般消費者男女20~49歳、2024年8~9月実施
●回答者数
(1) タイ:オンライン調査=800人、オフライン調査=400人
(2) インドネシア:オンライン調査=800人、オフライン調査=400人
(3) ベトナム:オンライン調査=1,600人、オフライン調査=800人(いずれもハノイ地域とホーチミン地域で半数ずつ)

<参照>
・Haerpfer, C., Inglehart, R., Moreno, A., Welzel, C., Kizilova, K., Diez-Medrano J., M. Lagos, P. Norris, E. Ponarin & B. Puranen (eds.). 2022. World Values Survey: Round Seven – Country-Pooled Datafile Version 6.0. Madrid, Spain & Vienna, Austria: JD Systems Institute & WVSA Secretariat. doi:10.14281/18241.24
・大久保暢俊・鷹阪龍太・山田一成(2021)「買物意識尺度の開発:公募型Web調査における妥当性検証」『社会心理学研究』37(2):76–84.

<注>
注1:タイ・インドネシア・ベトナムにおいて、それぞれ探索的因子分析(EFA)を行ったところ、いずれも日本の先行研究と同じ2因子構造が得られた。

*本調査結果は、「ミルコミnote」(https://note.com/macromill/m/me0d171521691)記事で、主として国別に結果をまとめ、5回に分けてご紹介しております。このコラムでは、全体結果をまとめてトピック別に掲載していきます。

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著者の紹介

熊谷信司

株式会社マクロミル マクロミル・グローバルリサーチ・インスティテュート シニアフェロー

熊谷 信司

東京大学大学院教育学研究科修了。総合調査会社を経て、2011年マクロミル入社。 リサーチャーとして国内外の数々の案件を担当後、2019年よりグローバルリサーチ本部でプランナー、2023年にマクロミル・グローバルリサーチ・インスティテュート(MGRI)を立ち上げ、海外調査・データの研究・開発を加速。 また、産学連携での教育や学術研究、マーケティング関連媒体での情報発信、業界団体委員など、多岐に活動。

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