P&Gも実践する「Connecting the Dots」 イノベーションを起こすための“新しい”価値の創り方

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マーケターコラム

2025/11/25(火)

この記事の内容をさらに深堀りするイベントを開催!

「Connecting the Dots」でインサイトを制す

博報堂×電通のトップクリエイティブ・ディレクターと米田氏が対談!「Connecting the Dots」を、第一線で実践するプロフェッショナルたちのセッションをお見逃しくなく

2025年12月5日(金)10:30-12:00

申し込む(無料)

Connecting the Dotsとは何か

 私は幸いなことに、市場でイノベーションを起こしてヒット商品を生み出すという成功体験を何度かさせてもらいました。それらを実現できた背景には、それまでの既成概念を覆すような新たな発見があったと思います。私が長年勤めたP&Gでは、イノベーションにつながる発見は、意味のあるデータや情報(点)をつなげて新しいパターンを発見すること、つまり「Connecting the Dots」が重要であると教わりました。

 「Connecting the Dots」という言葉を聞くと、Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズによるスタンフォード大学の卒業式辞を思い起こされる方が多いかもしれません。私もそのスピーチが大好きで、何度も聞き返しては感動しています。

先を見通して点をつなぐことはできない。
振り返ってつなぐことしかできない。
だから将来何らかの形で点がつながると信じることだ。
何かを信じ続けることだ。
直感、運命、人生、カルマ、その他何でも。
この手法が私を裏切ったことは一度もなく、
そして私の人生に大きな違いをもたらした。

(Steve Jobs 2005年スタンフォード大学卒業式辞から抜粋)

 彼がスピーチの中で使っている「Connecting the Dots」は、過去を振り返ってつなぐことによって見えてくる、それぞれの点(人生における出来事)の意味の深さです。スタンフォード大学を中退した彼が、今そのスタンフォード大学の卒業式辞を述べる立場にいるという因果。中退したため聴講生として受けたカリグラフィーの授業のおかげで、Macにスタイリッシュな要素を取り入れることができたという経験。Appleを創業したにもかかわらず、一度追い出され、そしてまた呼び戻されて経営再建に関わっているという因縁。人生における挫折や苦しみとも思われるすべての出来事に意味があり、今につながるための必然であった。だからこそ、大きな困難や挫折にぶち当たったとしても、その経験は必ず将来の何かにつながると信じて生きることが大切であると語るのです。

 では、イノベーションにつながる、新たな発見のための「Connecting the Dots」とは何なのか。それは、今の常識ではつながっていない点と点を関連づけることで、“新たな”価値を見つけることだと考えます。Dots(点)は、ひとつの事象やデータを指します。Connecting(つなげる)とは、それらをつなぎ合わせて新しい概念を発見することを指します。つなぎ合わせる点(事象やデータ)は、必ずしも新しく発見した点でなくても、以前からある既存の点であってもかまいません。何よりも重要なことは、課題解決の糸口となるような新たな組み合わせで「つながり=ストーリー=新説」を見つけることです。

 P&Gが開発した柔軟剤「レノア」が市場を2倍に拡大できた背景にも、それまで気づかれていなかった「新しい概念」を見つけたことがありました。レノアの発売前は、柔軟剤市場は昨年対比90%の勢いで縮小しており、競合各社は「柔らかさ」と「安さ」を競い合い、市場縮小に拍車をかけていました。ユーザーは柔軟剤に対するロイヤリティーを失い、「安ければなんでもいい」という風潮から「安くなければ買わない」「柔軟剤なんて別に必要ない」という存在へと格が下がりつつありました。そんな中でP&Gは、本来ならば「洗剤」が担うべき効能と考えられていた「消臭」を柔軟剤の付加価値とすることで、消費者に受け入れられ、喜んでもらえることを発見したのです。

 この「新しい価値創造」に至るまでには、様々な調査を実施し、膨大な量的・質的データを収集しました。それらの情報の中から特に重要なデータ(点)を抽出して、それらをつなげることで「柔らかくするための柔軟剤に防臭効果も付加しよう」という新しい価値をつくり出しました。

新説を見逃さないために必要なこと

  データ収集をする時も、新しい概念の仮説を立てる時も、ターゲットに対して仮説検証をする時も、常に絶対に気をつけなければならないことは、自分の色眼鏡を外して、バイアスをかけずに判断するということです。「自分が思い込んでいる概念を外さなければ新しい発見はないのだ」「自分がまだ知らない新しい概念については、自分は全く何も分かっていないのだ」という謙虚な気持ちで、できるだけ思い込みを外そうという意識が重要なのです。

  「多分こうなんだと思う」「これが答えだ」「そんなはずはない」「こんなデータは信じられない」など思い込みが強いと、素晴らしいデータや新説をいとも簡単に見逃してしまいます。主張が強く、人の話を聞けないタイプの人は、特に注意が必要です。イノベーションを起こすには、新しい概念が必要です。そして、新しい概念に行きつくには、「新しい」ものの見方や考え方を取り込む必要があり、自分と違うものの見方や考え方を真剣に傾聴して理解しようとすることが不可欠です。

  「Connecting the Dots」。自分が“これはこういうもんだ”的な「べき論」でずっと思い込んでいるものごとの因果関係や相関関係をくつがえすような、全く新しい点と点の結びつきを見つけられた時、リミッターが外れて、大きなイノベーションを起こせるのだと思います。

 今回マクロミルカンファレンスで「Connecting the Dots」をテーマに対談させていただく、電通の郡司さんと博報堂の中川さんは、今までご一緒させていただいたクリエイターの中でもターゲットインサイトを重視され、新しい視点や価値を創造することを得意にされている方々です。色々なお話を伺えることを、私も楽しみにしております。 

この記事の内容をさらに深堀りするイベントを開催!

「Connecting the Dots」でインサイトを制す

博報堂×電通のトップクリエイティブ・ディレクターと米田氏が対談!「Connecting the Dots」を、第一線で実践するプロフェッショナルたちのセッションをお見逃しくなく

2025年12月5日(金)10:30-12:00

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【登壇者変更のお知らせ】

上記イベントへ登壇を予定しておりました アサヒビール株式会社 代表取締役社長 松山一雄様は、やむを得ずご登壇を見合わせ、大変恐れ入りますが下記通り登壇者を変更いたします。楽しみにされていた皆さまには、心よりお詫び申し上げます。松山様から、お詫びと共に、新しいセッションへの熱い応援メッセージが届いておりますので、原文のまま掲載いたします。


今回、登壇を予定しておりましたマクロミルカンファレンスに急遽出席することが出来なくなり、大変申し訳なく存じます。また、この度のサイバー攻撃による弊社システム障害によって、皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしておりますことを重ねて深くお詫び申し上げます。
今回のテーマである「Connecting the Dotsでインサイトを制す」は、私が長年大切にしてきた考え方でもあり、弊社マーケティングに携わっていただいている対談相手の電通:郡司さん、ファシリテーターの米田さんとご一緒できることを非常に楽しみにしておりましたので、本当に残念でなりません。
私の代わりにご登壇お引き受けくださった博報堂:中川さんは、ご存じの方も多いかとは思いますが、クリエイティブディレクターとして広く活躍をされておられ、過去には弊社「ビアリー」にも携わっていただきました。インサイトに非常に長けた3人からインサイトの発掘やその活用法など、大変参考になるお話が聞ける、素晴らしいセッションになると思います。どうぞご期待ください。

アサヒビール株式会社 代表取締役社長 松山 一雄


著者の紹介

米田恵美子

株式会社インサイト・ピークス 代表取締役社長 元P&Gジャパン執行役員

米田 恵美子

P&G消費者市場戦略本部/CMKのヘッドとして執行役員を務めた後、コンサルティング会社設立。常任としてアサヒビール社・アサヒ飲料社・アサヒグループ食品社のマーケティングインサイトコンサルティングやマクロミルコンソーシアムへ参画。顧問を務めながら、多くの企業のマーケティングやブランディング、インサイト、リサーチ領域での相談を受けている。著書『専門家以外の人のためのリサーチ&データ活用の教科書(版元:東洋経済)』

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