「色の好み」はタイプで変わる?日中タイ×7つの価値観で探るカラー戦略|海外市場開拓のためのカラーマーケティング(第4回)

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マーケターコラム

2025/11/4(火)

最終回の今回は、「色」と価値観の関係に焦点を当て、国ごと、そしてタイプごとに異なる色の好みを深掘りします。 

同じ国の国民でも人の価値観は様々です。価値観によって色の好みは違うのでしょうか?
下記にあるような商品購買時の意識の回答パターンから、「潜在クラス分析」という手法を用いて、価値観が似ている消費者をグルーピングしてみました。

分析の結果、3カ国合算で消費者を分類すると、7つのタイプ(クラスター)に分かれました。
「独自志向」、「ステイタス志向」、「エコ志向」、「流行志向」、「かわいい志向」、「本物志向」、「お得・定番志向」に分かれて、構成比では「お得・定番志向」が最も多く、「独自志向」や「エコ志向」が最も少なくなっています。

色を気にして商品を購入する理由についてもクラスター別に見てみますと、価値観との相関性が高いことが伺えました。
例えば「本物志向・ステイタス志向」の人は高級に見える色を求めていたり、「流行志向」は個性的な色、「かわいい志向」はかわいい色・おしゃれな色、「お得・定番志向」は無難な色、「エコ志向」は環境にやさしい色、といったように、類似性が見えます。

マーケティング観点ではターゲットを定めることが多いと思いますので、価値観でターゲティングする際はそのターゲットのニーズを満たす色の選定というのも重要になります。

ちなみに価値観は日中タイではやはり異なっていたので、国ごとの傾向をご紹介します。
日本は「お得・定番志向」が最も多く、「エコ志向」が最も少なくなっていました。「お得・定番志向」がここまで多いのは驚きです。
一方、中国は「お得・定番志向」が最も少なく、「ステイタス志向」が最も多くなっています。
調査対象エリアを上海・北京としている影響もあるかもしれませんが想像どおりでした。
タイはバンコクを対象としていることもあるかもしれませんが、「流行志向」が多くなっていることが特徴的です。

各国でクラスターごとに好きな色の違いを見てみました。
日本では価値観ごとに色の嗜好性が異なる傾向がありました。例えば全体で最も人気であったブルーは「お得・定番志向」や「流行志向」に支持されていますが、「かわいい志向」はブルーではなくピンクを好んでいることが分かります。ブラックは特に「本物志向」に好まれていて、日本人の感覚からすると確かにそうかも、と感じました。

中国においては全般的にクラスター別の傾向差は小さいですが、最も人気色であるレッドは「本物志向」や「お得・定番志向」にはそこまで好まれていないため、みんながみんな赤が好きということではないようです。「お買い得・定番志向」はホワイト、「本物志向」はブラックを好む傾向が伺えます。

最後にタイですが、クラスターごとの差異は日本ほどではありませんが、中国よりも違いがある様子が見て取れます。例えばレッドやスカイブルーはクラスターの差異が大きくなっています。またブルーは「本物志向」が好み、ブラックは「独自志向」が好む傾向がありました。

このように、一口に「色の好み」といっても国ごとに異なり、さらにその国の中でも特定のグループごとに違うことが今回の調査から分かりました。このため、海外展開する際のプロダクトのカラーリングやコミュニケーション用のクリエイティブの検討時に、国毎に想定する顧客層の価値観も考慮して、色づかいをマーケティングの要素の1つとして活用していくと良いでしょう。

4回の連載コラムで「色」 をテーマにしてお伝えして来ましたが、「色」を活用するカラーマーケティングの基本視点をまとめると、下記の図になります。

出典:色彩検定 公式テキスト 1 級編 p104 図13

買ったり使ったりする「モノ」によって色の好みは変わります。また、これまでご紹介したように暮らす国や価値観によっても色の好みは変わります。そして、それは固定的なものではなく、時代や世相によっても変わるのです。

文化的背景や時代のムードを踏まえてターゲット顧客層の色の好みやその変化を理解することは、消費者の心をつかむ重要な鍵です。商品や広告に最適な色を選ぶことで、ブランドの印象や購買意欲に大きな影響を与えることができます。色は戦略です。

著者の紹介

岸原文顕

マクロミル 事業支援アドバイザー

岸原 文顕

キリンビール株式会社を経て、2020年にマクロミルに入社。キリンビールでは酒類・飲料の国内外における商品開発・マーケティングや、アジア諸国・欧州・北米の事業探索、推進に従事。これらの知見を活かし、マクロミルでは日系企業の海外市場進出や事業展開におけるマーケティング活動を支援。調査領域を超え、事業の観点からマーケティングにおけるアドバイスを行っている。BOONE合同会社代表、ソムリエ、全国通訳案内士。

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