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不確実性な時代を読み解く。「定点観測データ」の活用

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市場調査や社会調査では、個別の課題に必要なデータ収集のために設計する「アドホック調査 」だけではなく、同一手法で継続的にデータ収集する「定点観測調査 」も数多く実施されている。データをとり続けることは地味な作業でコストや手間もかかる。しかし、予想外の出来事で社会や人々の意識や行動が大きく変動するときにこそ、本領を発揮する。

データの変化からコロナ禍の影響を読む

今回、国内で新型コロナウイルスによる感染症の拡大が見られた局面では、代表的な定点観測調査である小売店販売データや、ホームスキャンによる購買データにも大きな変化が現れていた。例えば、小麦粉やパスタが売れる一方で、ドリンク剤や口紅の売れ行きが鈍化した。こうした現象の理由を考えることは、「巣ごもり消費」と呼ばれる新トレンドのリアルを読み解くヒントとなる。また、商圏調査などに使われるGPSデータを使った混雑度の観測データによって、ビジネス街の動きなどが可視化され、リモートワークの浸透度や政府による外出自粛要請などの施策効果が一目瞭然だ。購買データも行動データも、一般的な使い方とは異なる視点によって、新しい情報価値を生みだすことができる。

さらにコロナの拡大を受けて公表されるようになった、各方面における新しい定点観測データも注目を集めている。毎日の感染者数の数字やその動向は私たちの意識や行動に大きな影響を与え、東京アラートや緊急事態宣言ではこれらの統計、観測値が重要な根拠として使用される。5月には厚生労働省が4回にわたり「LINE」を使った大規模アンケートを実施、2,000万人以上の体調や生活習慣が調査、分析された。多くのメディアや研究所が、こうしたさまざまな観測データを収集し、専用サイトや日々の報道のなかで伝える努力を続けている。

Macromill Weekly Indexに表れた「異変」

マクロミルでは、国内における生活者の行動と意識の長期的な変化を観測するため、2011年から質問を固定した定点観測調査『Macromill Weekly Index』 (以下、MWI)を実施している。マクロミルが保有する約120万人のリサーチ専用パネルであるマクロミルモニタから、毎回無作為抽出した1,000サンプルが調査対象だ。MWIのWebサイトでは、過去380回以上、のべ38万人分 に実施された調査データが公開されている。調査項目は、消費、景気、政治などありふれた質問にも見えるが、コロナの拡大、収束にともなう消費者意識と行動の変化が鮮やかに浮かび上がる。(詳細は同社村上智章氏による連載「新型コロナウイルスが及ぼす消費者心理への影響」 参照)

例えば、MWI測定項目のうち「過去1週間に購入した品目」を見てみよう。商品やサービスなど約20項目の中から「家族との外食」と「食事会・飲み会」の2項目を選び、2013年5月から現在までの推移(図1)をみると、2020年では3月以降の比率が急激に減少したものの、底打ち後は家族外食が先行するかたちで回復のスピードも速かったことがわかる。また家族の外食は全期間を通じて30%程度でほとんど変わらない。一方で、外での食事会・飲み会の比率は減少を続けている。長期間の定点観測だからこそ得られる消費行動の変化である。

図1:データの推移

図1:データの推移

今回のコロナ禍の影響がどれほど特異なことだったかは、身近な景気や消費金額を尋ねた設問や生活センチメント(気分のポジネガ)、関心のある政策などほかの項目にも明確に表れている。なお、2020年5月からは、Tableauとデータ連携し、 ダッシュボードを用いたインタラクティブチャートを活用することが可能になり、誰でも自由に活用できるため、自分の視点でグラフを描いてみれば必ず新しい発見があるだろう。

世界との比較で価値はさらに上がる

定点観測は、時系列の変化(時間軸)だけでなく他エリアとの比較(空間軸)でみることでその情報量と価値はさらに上がる。コロナについていえば、ウイルスの感染そのものがグローバルな現象であり、日本のデータだけを見ていてはわからないことも多い。日本の現状評価や影響の大きさは海外との相対的比較を通して初めて明確になるのである。

マクロミルでは2020年7月から、アジア5カ国(中国・韓国・インドネシア・タイ・ベトナム)が調査対象となる『Macromill Weekly Index Asia』 (以下、MWIA)のデータ公開を新たに開始した。多くの日本企業がアジアの生活者を対象に、現地進出や越境ECのビジネスを行っており、同地域における生活者の行動やセンチメントを知ることの重要性はさらに高まっている。MIWAでは、日本と同じ項目を聴取している設問があるため、同じ手法でデータ収集することで、相対的に日本がどのような状況にあるかを知ることもできる。それぞれの国の状況把握や意思決定にとっても有用な情報となるはずだ。アジアの生活者意識に関心をもつ多くのマーケター、リサーチャーに役立てて欲しい。

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萩原雅之
萩原雅之
マクロミル総合研究所 所長
トランスコスモス・アナリティクス株式会社 取締役フェロー
1961年生まれ。日経リサーチ、リクルートリサーチを経て、1999年よりネットレイティングス(現ニールセンデジタル)代表取締役社長を10年間務める。2012年より青山ビジネススクール、2015年より早稲田大学ビジネススクール非常勤講師(マーケティングリサーチ)。日本世論調査協会個人会員。著書に『次世代マーケティングリサーチ』(2011年)など。

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