【後編】データドリブンマーケティングに必要なデータについて考える

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マーケターコラム

2019/6/7(金)

マーケティング戦略に必要なデータとは?

前編では、データドリブンマーケティングに必要なデータ活用の”考え方“について触れましたが、今回はもう少し汎用的な“今後のマーケティングに必要なデータ”について考えていきます。

さて、目的が設定され、マーケティング戦略からコミュニケーション戦略に落とし込んでいくプロセスには、企業によって長年培ってきたものがそれぞれあるでしょう。Supershipでは音部大輔氏(株式会社クー・マーケティング・カンパニー)が提唱している、消費者の認識変化を軸にした『パーセプションフロー・モデル』を推奨しています。(このモデルについてここで語り始めると本題から大きくそれていくので、音部氏が各メディアで寄稿されている記事に委ねます。)

『パーセプションフロー・モデル』に限らず、各企業には独自の戦略策定プロセスがあると思います。そこには「自社ブランド・サービスの顧客を理解する」、「ペルソナを描く」、「ターゲットを設定する」といったプロセスがどこかに組み込まれているのではないでしょうか。しかしその際に、20代女性・30代男性といったシンプルな属性による切り口を使っているケースをまだよく見かけます。これもまた当然の話ではありますが、同じ20代の女性といっても、独身で働いている女性と結婚して子供がいる専業主婦では当然消費行動や価値観は大きく変わります。

もちろん40代や50代より、20代や30代の方がこれから結婚する確率は高いとは思いますが、属性と同等かそれ以上に重要なのは、置かれているライフステージ(例:社会人独身期、専業主婦ディンクス期)やそれに伴って発生するライフイベント(例:就職、結婚など)を把握することです。そしてその女性の行動が、妻としての行動なのか、母親としての行動なのか、主婦としての行動なのかを理解することが、ただ漫然と属性を理解することよりも重要であることは、ご理解いただけるのではないかと思います。

ただし、世の中のデータのケーパビリティが、シンプルな属性以上のデータになかなか踏み出せないという限界はあります。

ライフステージ・ライフイベントへのアプローチ

消費者理解にライフステージやライフイベントが重要であれば消費者行動分析の手法としてライフステージ・ライフイベントデータの活用は視野にいれたいところです。

例えば“エアコンを購入する”という消費行動ひとつを取っても、そのユーザーのライフステージ・ライフスタイルによって求められる生活課題は異なります。これらをデータで理解することにより、売り手はより適切なコミュニケーションを図ることができるようになります。

仮に“空気清浄機能がついているエアコン”を例として考えてみましょう。図のようにライフイベント「引っ越し」のタイミングでよく買われており、ライフステージは「ディンクス期」に移行したタイミング、つまり結婚がトリガーになっていると分かるとします。この場合、同じライフステージ・ライフスタイルであってもユーザーの年齢や興味関心が異なる場合もあるでしょう。そのため、ここに年齢や性別といった従来の属性データも掛け合わせることで、多角的に消費行動を理解することが出来るようになります。

ライフステージ・ライフイベントデータの概念例

図 ライフステージ・ライフイベントデータの概念例

これまでバラバラだったデータを整理・学習することで何ができるようになるのでしょうか。ユーザー毎の“引っ越し“や”子育て”といった各ライフステージ・ライフイベントデータをベースに、属性・興味関心といった従来データを紐付けることで、消費者理解の精度が高まります。その結果、より適切な消費者理解・コミュニケーション設計が実現します。さらにその先には、「結婚して引っ越しすると○○%の方が“空気清浄機能付きのエアコンを買う」といった市場&需要予測型のアプローチや、“結婚”や“引っ越し”などユーザーのライフステージ・ライフスタイルそのものの予測も可能になるのではないかと思います。

結果、データの活用範囲が、狭義のマーケティングだけではなく、商品やサービス開発などより本質的なビジネスインパクトを与える領域まで拡大しやすくなり、本来あるべきデータ活用の姿に一歩近づくのではないでしょうか。コミュニケーションすべき顧客とクリエイティブがクリアになるだけではなく、施策段階においてもデジタル施策においてはライフステージ・ライフイベントのデータが活用できるという点がメリットにもなります。

これらのライフステージ・ライフイベントデータは、ブランド企業単独で持ち得るのは難しく、かつデリケートなデータでもあります。しかし最近ではマクロミルをはじめ、先進的なリサーチ会社やデータホルダー・データプロバイダーの努力と機械学習といったテクノロジーの進化で徐々に現実のものになりつつあります。

ここまでデータが進化した時、行動そのものや行動の変化、それらのおおよその理由(ライフステージ・ライフイベント・興味関心)に、短期間で精度高くアプローチ出来るようになるでしょう。しかし、全てがデータで明らかになる、という状況が実現するまでにはもう少し時間が掛かると思います。最後は人の解釈で有用にも無用にもなりますので、前編でご紹介したアンケートにもあった課題「分析したデータを有効活用出来ていない」も解消していかないといけません。ただ、データの進化で少しずつ人間がせざるを得ない解釈の余地が狭まりつつあるのも事実です。これらのデータの有効活用についてはまた機会があればお話できればと思います。

著者の紹介

中村大亮

中村 大亮

Supership株式会社 マーケティングエバンジェリスト
ライオン株式会社、株式会社オールアバウト、三菱電機株式会社においてマーケティング業務を担当。テレビ、イベント、デジタル等、オフライン・オンラインのマーケティングを経験し、直近はデジタルを中心にソーシャルメディア、アドテクノロジー、データ活用、コンテンツマーケティングと幅広くデジタルマーケティング業務全般に携わる。2017年4月にSupership株式会社へ入社し、データを起点としたマーケティング支援に携わる。
第10回Webクリエーション・アウォード「WEB人賞」受賞、第2回「CNET Japan CMO Award」受賞。アドテック東京、iMEDIA SUMMIT、日経BP社主催「モバイル&ソーシャルWEEK」、Salesforce World Tour Tokyoなどの数々のイベントでスピーカーとして登壇。

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