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テレビとデジタル、不等号の向きが変わると起こるそれぞれの機能の変化  その1

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ブランディング広告でのテレビ×デジタルの3つの考え方

消費者のメディア接触時間が大きく変化していることは、周知のことだ。デジタルネイティブ世代もどんどん成長し、主要なマーティング対象になりつつある。

筆者の周辺でも、小学生の子供がほとんどテレビを見ないでYouTubeばかり見ているという話を聞く。実際データで見ても若年層のテレビの到達効率は高齢層とは比較にならないほど悪い。テレビのCPM(Cost Per Mille:広告を1,000回表示させるためのコスト)が安いのは圧倒的にテレビ視聴している高齢層によるもので、全体では400円強といったところだが、ターゲットをティーンや20代に絞ると10倍~20倍になってしまう。

人口の多い高齢層の視聴率が高く、人口の少ない若年層の視聴率が低いことで起きているテレビメディアの到達の偏りは、世帯視聴率だけではマーケティングデータにはならない最大の理由である。また世帯視聴率が取引単位である以上、テレビ局は世帯視聴率を追い求める訳で、結果50代以上の高齢女性層の視聴を取りに行くことになる。

しかし、メディア接触とその反応は今、世代によって劇的に違う。 高齢層は日に100本以上のテレビCMに当たっているものの、その反応は鈍い。一方若い人はスマホをいじっていながらでも、周辺視野に入り込む情報やサウンドに敏感に反応している。

筆者があるテレビ局幹部と話をしたとき、「これだけ視聴者が高齢層に偏ると、あえてそうした層に対応していかざるを得ない」ということを言っていた。しかし、筆者は、反応の仕方が違うので、若年層対象の番組コンテンツに再度力を入れることは重要であると話したことがある。

つまり、メディア接触もその対象別に反応を把握することで、「量」の指標だけでなく、「質」の指標をつくることが大事になっているといえる。

筆者が、今後マクロミルのような調査会社に期待するのは、テレビやデジタルデバイスやリアルなポイントでの、ターゲットごとの反応値を測定してほしいということだ。

特に、スマホで動画などのコンテンツや広告に接触したときにターゲットはどう反応し、認知や記憶にとどめる作用がなされるのか、が知りたい。

従来のテレビCMに関しては、調査対象者にCMを見せて脳波やアイトラッキングデータを取得し、CMのどの部分や要素にどんな反応が起きているかをデータ化する手法がとられており、こういった手法は確立している。しかしスマホというデバイスでは、どのように脳波が反応しているかはまだしっかりした調査手法がないように思える。

早晩、接触時間でもテレビをデジタルデバイスが抜く。すでにそうなっている世代も多い。その時には、主体はデジタルでテレビ側を「どうデジタルを補完するか」と考える時代が来るだろう。テレビとデジタルを同じ土俵に上げて、その組み合わせ方を考えるためにも双方の「質」をデータ化、指標化する必要がある。

さて、テレビとデジタルを統合して広告効果を考えるには基本3つの視点がある。

テレビ×デジタルの方向性 最適アロケーションの考え方

テレビ×デジタルの方向性 最適アロケーションの考え方

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テレビ×デジタルの方向性 最適アロケーションの考え方

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一つ目は統合リーチという視点。 若年層を中心にテレビだけでは到達しづらくなっている層を、デジタルでリーチさせ、「統合リーチ」をテレビだけよりもより効率的に獲得する考え方である。 特に若年層だと、テレビCMだけでのリーチは一定量以上になると伸び悩む。これをデジタルデバイスで取りに行くことで、テレビCMのGRPを増やして取りに行くよりもコストパフォーマンスが良い場合が多い。

二つ目は、フリークエンシーの補正を行うことでの認知効率を上げる視点。 テレビスポットなどのようにCMをまんべんなく投下すると(パターンはいろいろあるが…)接触回数(フリークエンシー)が、0回・1回の人が多くなるが、一方で、人口もテレビ視聴時間も多い高齢層においては20回以上のフリークエンシーの人も多くなる。つまり、フリークエンシー過多と過少フリークエンシーに二極化する。

そもそもフリークエンシーのコントロールが効かないテレビだけではこれを補正することがほぼ出来ない。 本当は全員が5~6回ずつ見てくれればいいが、そうはいかない。

(よく広告代理店から「今回のテレビスポットキャンペーンは〇〇〇GRPなので、リーチは〇〇%で平均フリークエンシーは〇.〇回です。」という報告があると思うが、この平均フリークエンシーという数値に騙されてはいけない。平均値に正規分布しているわけではなく、平均値のフリークエンシーで当たっている人は数少ないと思った方がいい。またこの数値はCMに当たった人の平均であって、回数0の人を含めていない数値だ。)

そこで、デジタルCMでターゲットに一定以上の回数をプッシュして、テレビとデジタルを統合すると有効かつ適正なフリークエンシーの人が多くなるように「フリークエンシーを補正する」という考え方が出てきた。

デジタル配信ではフリークエンシーコントロールが出来る。ただ従来のネット広告のフリークエンシーコントロールはキャップ(〇回以上は見せないという)をかけるというものだったが、ブランディング広告では、ターゲットに〇回以上見せるという〇+という考え方になる。

こうすると理論的には認知効率が上がるはずである。デジタルによるテレビの認知補完になる。

そして、三つ目は、テレビCMとデジタルCMを両方見た人の態度変容効果を狙うという視点である。 実際にテレビ、デジタル双方に接触した人の「購入意向」などの態度変容がテレビだけ、デジタルだけよりかなりリフトするという検証が色々なところでなされている。

この場合、テレビCMはブランドの文脈でできているが、デジタル(オンライン)広告はユーザーの文脈でできている方がユーザーが反応しやすいということがある。つまりテレビCMと同じ素材(クリエイティブ)での訴求だけでは効果を醸成しづらいかもしれない場合もあるということだ。

テレビ×デジタルでブランディング効果を追求する場合、CMを送り届ける手段をテレビ以外にも求めないとパフォーマンスが悪い、ということに既になっていることを前提に思考しないといけない。

特に若年層にはブランド訴求をCMという情報量の多いコミュニケーション手段で、行っておく必要がある。 昔は、子供たちはテレビをよく観ていた。 クルマもお酒も化粧品も、テレビCMにたくさん当たっていた。

ゆえに、成人してお酒を飲めるようになった時、あるいは免許を取れる年齢になった時、お化粧を始める時になっても、子供のころから見ていたテレビCMでのブランドコミュニケーションは機能した。

それが今は怪しい。

そうしたブランドコミュニケーションの蓄積をどう代替するのかも大きなテーマだ。

次回はそのあたりと、デジタルシフトによる大きな構造変化に触れる。

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横山隆治
1982年青山学院大学文学部英米文学科卒。同年(株)旭通信社入社。1996年インターネット広告のメディアレップ、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(株)を起案設立。同社代表取締役副社長に就任。2001年同社を上場。インターネットの黎明期からネット広告の普及、理論化、体系化に取り組む。2008年(株)ADKインタラクティブを設立。同社代表取締役社長に就任。2010年9月デジタルコンサルティングパートナーズを主宰。2011年7月(株)デジタルインテリジェンス代表取締役に就任。

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