インフォームドコンセントとは?目的や意義、リスクや注意点など詳しく説明

インフォームドコンセント(Informed Consent)とは、研究対象者(被験者)に対し、研究の目的や方法、予測される利益やリスク、プライバシー保護などを事前に十分説明し、自発的な意思決定に基づいて参加を同意してもらう研究倫理上の重要な手続きを指します。臨床研究や臨床試験などで、被験者に研究の意義・手続き・可能性のある不利益を理解してもらい、自由意志で参加するかどうかを選択する行為を指すのが大きな特徴です。

単に承諾のサインを得ることではなく、対象者が研究に伴うあらゆる情報を理解し、納得したうえで協力していただくことを重視します。研究者側は研究対象者に不当な圧力や誤解を与えないよう、専門外の人にも分かりやすい言葉で説明を行う必要があります。

インフォームドコンセントが求められる背景

ヒトを対象とする研究では、対象者の身体的・心理的リスクを最小化し、同時に人権や尊厳を守る仕組みが国際的に整備されてきました。ヘルシンキ宣言といった歴史的な研究倫理の流れを受け、研究対象者への情報開示と自由意思に基づく参加が原則として確立されました。

近年では遺伝子解析など、新たな手法が研究に導入される一方、個人情報保護やプライバシーへの懸念も高まっています。そこで、研究者がデータ活用範囲等を研究対象者に説明しするなど、身体的・心理的リスクに加えて、プライバシー面でも選択の余地を提供するインフォームドコンセントが一段と重要視されるようになりました。

インフォームドコンセントを支える要素

インフォームドコンセントを正しく実施するには、以下の要素が大きく関わります。

  • 情報開示と理解促進:研究の目的、方法、期間、想定されるリスクや負担、プライバシー保護やデータ取り扱い方針などを、研究対象者が理解しやすい表現で説明する。
  • 自由意志による同意:参加する・しないの選択を研究対象者自身に委ね、いつでも研究から離脱できる権利を保証する。
  • 記録と管理:研究対象者が同意した事実を文書や電磁的記録残し、データの匿名化やセキュリティ対策を徹底する。倫理委員会や法的規制に準じた保管ルールを守る。

これらを円滑に組み込むことで、研究対象者への配慮と研究の正当性を確保し、倫理的にも法的にも透明性を高めることができます。

インフォームドコンセントを導入するためのステップ

研究者や研究機関がインフォームドコンセントを導入するには、まず対象となる研究計画を作成し、倫理指針や法規制に適合しているかを確認します。次に、同意説明文書(研究概要、リスク、データ管理方法など)を研究対象者に対してわかりやすい言葉を用いて作成し、研究対象者への事前説明の場を設けます。その後は、研究対象者が同意署名や電子同意を行った際の記録を保管し、実際の研究期間中に追加のリスクや変更点が生じた場合は、必要に応じて追加説明と再同意を得ることが必要となります。

インフォームドコンセントのメリットとデメリット

メリットとしては、研究対象者が研究を理解し納得した状態で参加するため、データの信頼性やデータ品質が向上しやすくなります。また研究対象者との思わぬトラブルを予防できる点が挙げられます。一方、デメリットとしては、同意説明文書の作成や署名の手続きを整えるのにコストと時間がかかり、研究デザインが複雑化する場合があります。特に、研究対象者が多数参加する研究ではり、運営上の負担となる可能性があります。そのため動画やオンラインなど電磁的方法を用いたインフォームドコンセントを実施するケースも増加しています。

インフォームドコンセントの活用事例に学ぶポイント

ある栄養学研究所がサプリメントの有効性を検証する臨床試験を計画し、丁寧なインフォームドコンセントプロセスを採用したところ、研究対象者から信頼を得ることができたことで協力的な態度が得られたため、予定より多くの高品質なデータを集めることができた事例があります。その結果、研究の信頼性が高まり研究機関が評価されました。また、研究対象者は安心して臨床試験に参加すると、日々の日誌データ等に疑問が発生した際の受け答えが正直かつ詳細になる傾向があり、正確なデータが得られたとされています。

現代におけるインフォームドコンセントの役割

学術研究や臨床試験が多様化・高度化するにつれ、研究対象者の権利とプライバシーを守るインフォームドコンセントの重要性はさらに高まっています。AI解析や大規模データ連携が行われる研究でも、研究対象者が自分のデータがどう扱われるかを理解し、権利を担保しなければなりません。

今後は、オンラインフォームや電子署名など電磁的インフォームドコンセントが進む中でも、よりわかりやすく理解しやすい言葉で丁寧に説明する姿勢が欠かせないでしょう。研究者と研究対象者が相互理解を得ることで、研究成果の質と社会的受容が同時に向上し、研究倫理と学術成果が両立する健全な研究体制を築けると期待されます。

まとめ

インフォームドコンセント(Informed Consent)とは、研究対象者に対して研究目的やリスク、データの取り扱い方などを説明し、理解・納得してもらったうえで参加の自由意志を尊重するための手続きです。倫理的側面と法的規制の観点から、臨床試験や医学系調査においての実施が求められます。

適切に運用すれば、研究対象者の信頼感を高め、研究データの信頼性や質を向上させる効果も期待できます。研究の透明性と研究対象者のより自主的な協力確保が研究成果の社会的評価を高める鍵であるため、インフォームドコンセントは現代の研究活動に不可欠な要素と言えるでしょう。

マクロミルはフェムケア/睡眠/ストレス/活力等の不定愁訴領域に強みを持つCROです。国内最大の被験者バンクを保有するCROとして、被験者獲得の難しい不定愁訴領域において圧倒的な被験者呼集数と高品質なデータ取得を実現できます。

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監修:株式会社マクロミル マーケティングユニット

20万人以上が登録するマーケティングメディア「Macromill News」を起点に、マーケティング知見や消費者インサイトに関わる情報を発信。

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