アジアのターゲット市場で消費者調査を行うと、「なぜこういった傾向がみられるのか」と、スコアの解釈への悩みに直面することがあります。その裏には、各国の消費者意識に影響をあたえる「社会背景」「文化背景」等が必ず存在し、海外での調査データの分析で重要なポイントとなります。
そこで当社は、アジアにおけるマーケティング戦略や海外調査をご担当される方が調査企画を策案する際、有用な基礎情報源として活用いただける『アジア4カ国(中国・インドネシア・タイ・ベトナム)の生活者価値観レポート』をまとめました。本連載は、各国の有識者の知見に基づいた仮説と分析を、マクロミルが独自に実施した自主調査で検証するというスタイルでご紹介していきます。
今回は、インドネシアの以下のような各世代が影響を受けた「経済背景と、購買傾向」について解説します。
- 第1世代「Gen1」 ムルデカ世代(独立戦争世代)(1945~64年生まれ)
- 第2世代「Gen2」 オルデバル世代(スハルト体制世代)(1965~74年生まれ)
- 第3世代「Gen3」 インドネシアのミレニアル(1975~98年生まれ)
- 第4世代「Gen4」 ジェネレーションZ(1998~2002年生まれ)
インドネシア人の価値観に影響を与えた経済環境
中間層による消費が安定した経済成長を支える
インドネシアは、過去50年間にわたり一貫して9~10%のGDP成長率を保っています。経済成長を促しているのは主に国内の消費であり、現在はGDPの66%を占めています。インドネシアの中間層は、一般的に所得が月収500万ルピア以上の世帯のことを指しており、Gen1とGen2はこのグループに含まれています。総人口の67%を占め、伸展する中間層がこの経済の成長を支えているのです。
個人の所得増加に合わせて成長している消費者信用は、主に家や車の購入時に利用され、国内消費をさらに推し進めています。また、月収500万ルピア以上の所得があり、銀行口座を持っているグループに対してクレジットカードとデビットカードの積極的なマーケティングと個人向け販売を展開した結果、この決済手段も社会に浸透していきました。
インドネシアの経済に関する期待感
経済統計に表れている通りインドネシア経済は長期にわたり安定成長をしています。インドネシア人の楽観主義的な価値観も一つの要素として考えられます。生活者はその経済環境を実感しているようで、多くの人がインドネシア経済の先行きは有望であると考えています。以下の調査結果のように、「非常に有望」「有望」という回答を足し上げると、全世代で90%前後と非常に高い結果でした。
インドネシア経済の先行きに対する意識
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富めるGen1、補助的な収入も。倹約意識が高い。
ここからは、各世代の経済状況と購買行動について解説します。
Gen1の社会経済の上位層にいる人たちは、民間の基金(JAMSOSTEK)から年金を受け取ります。このような年金は通常は一括払いです。
政府職員の年金はそれよりも40~50%低く、毎月の給与のように支払われます。最後に支給された給料の70%が毎月支払われる年金の額です。年金の他に補助的な収入を得るために、退職者がまた就職したり、投資活動を始めたりすることは珍しくありません。
また、貧困の時代から這い上がってきたこの世代は、社会的価値観としての倹約意識が高く、節度のある生活の中で必需品にのみ出費をします。商品を選択する基準は「長く安心して所有できるか」が重要であるため、安心できるブランド(決して高価なものでなく、実用的な)を選びます。商品選択時には、友人・知人などからの口コミ情報を参考に、慎重にモノを選びます。
Gen2は「経済的に最強」世代
Gen2は今最も生産性が高い世代で、急成長している中産階級/富裕層の大部分を占めており、経済的消費者支出は国内GDPの最大の貢献者(55%)です。経済的基盤の確保と家族の経済的なニーズ(海外高等教育、予防医療、セキュリティなど)が優先事項です。
また、経済成長とともにアクティブな社会/家庭生活、自分の車やオートバイを所有する余裕がでてきた世代で、倹約家ではありませんが家計は保守的に管理しています。子供にかかる費用や、予定外のやむを得ない高額な出費を心配しています。経済的援助が必要な両親や兄弟姉妹に対しては、家族の価値観を大切にし、相互扶助の精神と人道的な行動をもって対応します。
また、見栄のための消費はせず、ブランドは自己表現の手段ではないという意識があり、自分の身の丈にあったものを選びます。ブランドより利便性が重要という合理的な消費行動が特徴です。また、「身の丈に合った」という点では、消費者金融には依存せず「買う余裕があったら買う」という堅実な世代です。
購買チャネルは「インドネシア人の国民的娯楽」であるショッピングモールで、「見て、触れて、確かめる」という行動が主流ですが、オンラインショッピングへの移行も徐々に進んでいるようです。
Gen3はモノよりコト
高度経済成長の恩恵を受けて育ったGen3(=ミレニアルズ)は、計画的なGen2とは異なり、家を購入したり、金融資産を増やしたりすることよりも、ライフスタイルとして体験価値の高い車、ファッション、電子機器の所有を重視しています。
ブランドに対する重視点は、自分に合っているか、最新テクノロジーが使われているか、ブランドの品質とオリジン(どの国で作られたものなのか)です。
体験重視型のアクティブなライフスタイルへの出費は惜しまず、日本、韓国、ヨーロッパ、アメリカなどへの海外旅行に関心を持ち、健康とウェルネスに対する高い意識を持っています。休暇の過ごし方は、サイクリング、ハイキング、ダイビングなどのアクティビティ系を好みます。
自身の経済行動に計画性の意識が低いこの世代は、購買資金の多くを消費者金融に依存しています。
また、Gen3はオンライン購買比率が高く、オンラインプロモーションへの情報接触が高いため、Eコマースのターゲティングには乗りやすい世代です。トレンド情報やSNSのコミュニティでの情報を頻繁にチェックしており、オンラインプロモーションとの親和性が最も高い世代と言えます。定量調査の結果によると、Gen3~4の3人に1人強が「ほぼ毎日」オンラインショッピングやサービスのサイトにアクセスしていることがわかりました。
一方で、ピアプレッシャーに対する弱さ(友人や同僚に買ったものを見せたい、自慢したいと思う気持ちに負けてしまう)から、衝動的な消費も見られます。
日用品をオンラインで購入する割合
日用品の購買におけるオンライン購買率を定量調査の結果から見ると、Gen1~2よりもGen3~4の方が高く、Gen3は最もオンラインでの購入率が高いことが分かります。
日用品(食品、飲料、化粧品、書籍、衣類を含む)をオンラインで購入する割合(世代別)
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未知数なGen4
欲しいと思ったらすぐ手に入れたいGen4は、保護者に対し経済的に依存しているにも関わらず、利己的で衝動的な消費行動を取る傾向があることが特徴です。
テクノロジーに精通し、デジタルネイティブであるためスマートフォンの機能を全て使いこなし、実際の店に買い物にいくよりもオンラインショッピングを好みます。ショッピングモールにも行きますが、購買チャネルとしてではなく、ウインドウショッピングや友人との交流の場として利用します。
消費に関連する情報収集から購買まで、様々な消費行動(データストリーミングやゲームといったデジタルサービスから、海外旅行や国内旅行の予約まで)がオンライン中心になっています。また、この世代のみをターゲットとするEコマースのサイトを閲覧したり、そこから購入したりします。
まだ年齢的にも購買力は大きくはありませんが、オンラインレビューなどの情報に精通しているため、家族がモノを購入する際の情報提供者として頼られています。
スマホアプリは、音楽・動画、オンラインゲームなどの利用率が高い
スマートフォンアプリでのサービス利用状況を世代別に見ると、網羅的にサービスを利用しているのがGen3で、Gen4は音楽・動画やオンラインゲームなどのコンテンツ利用率が高くなっています。生活関連のオンラインサービスはGen1~2でも利用率が高く、浸透しているようです。
スマートフォンアプリで普段利用するサービス
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ミレニアルズ以降の購買決定プロセス
実際の購入の決定は、スマートフォンでブラウジングし、ショッピングモールを訪れて商品を見て感じ、最終的にプロモーション価値が最も高いどちらかで購入する傾向が出てきています。
ミレニアルズ以降の購買決定プロセス
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以上が、インドネシアの有識者の意見を交えた、各世代が影響を受けた経済背景と、購買傾向です。本連載では、研究で得られたインサイトをベースに、購買行動、テクノロジーの影響、家族とのかかわり、社会からの影響などをテーマに調査を行い、定量的にその内容を検証していきます。
次回は、「各世代の価値観に影響を与えた政治・社会背景とは【タイ編】」をご紹介します。
- 定量調査の調査概要
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調査地域: インドネシア全土 世代別回答者数: Gen1(n=54)、Gen2(n=211)、Gen3(n=3299)、Gen4(n=598)
※各世代で男女が概ね半数ずつになるよう割付。民族別の割付は行わず、自然発生ベースで回収調査方法: インターネット調査 調査時期: 2019年12月
米国フォーダム大学大学院修士課程修了。LVMHグループにてブランドマネージャー、PwCコンサルティングにて国内外の企業のマーケティング戦略プロジェクトに参画。その後、オグルヴィ&メイザーにて日本企業の海外ブランディングおよびマーケティングを支援するエキスポートプラクティスを起ち上げ、ジェネラルマネージャーとしてチームをけん引。現在は、マクロミルにて日本企業の海外市場における調査と戦略サポートを務める。
お客さまの課題・ニーズを伺ってリサーチの企画・提案を行います。
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