アジアのターゲット市場で消費者調査を行うと、「なぜこういった傾向がみられるのか」と、スコアの解釈への悩みに直面することがあります。その裏には、各国の消費者意識に影響をあたえる「社会背景」「文化背景」等が必ず存在し、海外での調査データの分析で重要なポイントとなります。
そこで当社は、アジアにおけるマーケティング戦略や海外調査をご担当される方が調査企画を策案する際、有用な基礎情報源として活用いただける『アジア4カ国(中国・インドネシア・タイ・ベトナム)の生活者価値観レポート』をまとめました。本連載は、各国の有識者の知見に基づいた仮説と分析を、マクロミルが独自に実施した自主調査で検証するというスタイルでご紹介していきます。
今回は、ベトナムの以下のような各世代に影響を与えた「生活者の価値観・地域での違い」について解説します。
- 第1世代「Gen1」 ベトナム戦争世代(リタイヤ層)(~1975年生まれ)
- 第2世代「Gen2」 ドイモイ世代(ジェネレーションX)(1976~89年生まれ)
- 第3世代「Gen3」 ミレニアル世代(フリートレード世代)(1990~99年生まれ)
- 第4世代「Gen4」 ポスト・ミレニアル世代(ジェネレーションZ)(2000年生まれ~)
国内移住が多いベトナム
仕事のための移住と都市化
ベトナムの都市化率は東南アジアの中でもトップレベルです。2009年以降、新都市の数は31都市増え、合計で73都市。総務部統計局のデータによると2019年には、農村地域の人口は6,300万人、都市部の人口は3,300万人でした。総人口に対する都市部の人口は、2007年が28%だったのが、2017年には35%に増加しました。
ベトナム人は、多くが国内移住をします。2015年の国内移住調査によると、ベトナムの人口の13.6%は国内移住者です。農村地域が13.4%に対して、都市部が19.7%と高く、最も多いのは東南部で29.3%です(出典:総務部統計局2016年データより)。ベトナムの国際移住者は、入国と出国を合わせて総人口の2.9%しかいないことから、ベトナムの国内移住者の数が国際移住者の数を軽く超えていることがわかります (出典: UNDESA 2017)。
地域別の移住経験
定量調査で、国内移住の経験を尋ね、地域別に比較しました。大都市圏では多くの人々が国内移住を経験しており、ハノイが位置する北部と、ホーチミン市が位置する南部の国内移住が多いようです。
よりよい進学先や仕事を求めた引っ越しの経験
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環境意識
環境に対する意識の向上
ハノイと並んでホーチミンは、東南アジアの都市の中で公害が非常に深刻なエリアです。Shell社の発表によると、大気汚染が間接的な死因と認定されたベトナムの2016年の死亡者数は6万人を超えるそうです。直接の死因は主には脳卒中、心臓疾患、肺がんです。近年実施された調査結果から、環境問題に対する人々の意識は高まってきており、非常に懸念している人も多いということが分かりました。調査に協力した人の多くが、「政府高官や大手企業のリーダーたちは環境や公害のことは問題視していない」と思っています。(出典: Asia Times, Hoan& Guen)
ハノイ、ホーチミン市民の問題視1位は「環境汚染・公害」
定量調査の結果でもハノイ、ホーチミンでの社会問題に対する関心は環境汚染・公害が最も多く、市民が社会問題として実感していることが浮き彫りとなりました。
深刻だと思う社会問題
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地域格差
ドイモイ(刷新)政策よる都市と地方の格差
1986年12月、保守派政府に代わり、改革派に新しいリーダーシップが誕生しました。国はドイモイ(刷新)と呼ばれる一連の自由市場改革政策を導入し、計画経済から社会主義的市場経済への移行を慎重に管理していきました。国は、戦略産業の支配は堅持する一方で、農地や工場の私有化、経済の規制緩和、海外投資を奨励しました。ベトナム経済はその後、農業生産、工業生産、建築、輸出、海外投資の分野で大きく成長しました。しかし、ドイモイ政策は、所得平等性や社会的の一体性にネガティブな影響を与えたのです。資本の不均等な分配は、特に海外投資の分野では顕著に表れており、農業地域と都市部・工業地域のライフスタイルの差を広げていきました。
情報格差
コミュニケーションテクノロジーの幅広い採用による格差の改善
格安携帯電話とSNSの普及によって地理的な境界線がなくなってきています。人口の73%が携帯電話を利用し、43%がスマート機器を使っています。人口の67%がインターネットを利用しており、インターネットユーザーの73%がPCから、24%がモバイルからウェブにアクセスしています。
地域ごとの特徴や歴史
地域的な価値観の違いは、各地域の歴史、気候、経済的な発展の違いによって生じています。
北部
北部の人たちは、非常に働き者です。古い儒教の教えの影響を受けており、見栄や体裁を非常に重視しています。高級ブランドの購入は社会的地位の象徴であり、そのようなブランドを所有することは重要だと考えています。購買時の意思決定要素に、製品の機能性はさほど含まれることはなく、流行を追うことの方が重要視されています。富裕層と政治家のトップ層にいる人たちは、つけている腕時計の価値で社会的地位を誇示します。
この地域では、「村の文化」ともいえるピアプレッシャー(周りの目を気にすることによるプレッシャー)が何百年にもわたり常に存在しています。昔はお金がない時期もありましたが、戦後には金銭的な余裕もでき、ピアプレッシャーを解き放つための消費ができるようになりました。北部の人は、南部に引っ越してもこの習慣をやめることはしません。
中央部
中央の人たちは、消費を控えて貯金をすることを選びます。この地域の天候条件は厳しく、毎年少なくとも5回は暴風雨に見舞われるため、災害や緊急時のために貯金をします。文化的には儒教の色合いが濃く、家長は男性であり、家族の重要な決定は家長である男性が下します。北部とは違い、商品購入時は製品の機能性や耐久性を重視し、また、必要が生じたときにのみ購入をします。
若者たちの多くは、出稼ぎのために大都市へ移住し、故郷に稼いだお金を持って帰ります。ベトナムでは一般的に、労働力が都市部に流れる傾向がありますが、ここでも同様の傾向が見られます。また、働きに出た人たちはお金を持って帰ってくるため、中央部には製品も集まるようになります。中央部は景色もよく、特に海沿いの場所には観光で人がよく訪れるようになりました。静かな場所であり、科学的な研究が実施されることもよくあります。
ベトナム政府は、中央ベトナムの開発に乗り出し、そのための政策を打ち出しました。中央部の景気が良くなれば、仕事のために移住していった人たちはまた自分の生まれた町へ戻ってくるでしょう。子供たちが故郷に戻りたくてもお金がなくて戻れなかった時代は、中央部の子どもが親の面倒を見る家族文化にとっては打撃的なことでした。
南部
南部の自然環境と気候は温暖です。南部の人たちはのんびりしており、誰かに押し付けられることもなくトレンドの流れに乗り、新しい製品を試すことに前向きです。ブランド志向であり、購買時の意思決定には、特にイギリス、アメリカからの外国の文化の影響を受けていますが、製品の機能性や有用性は重要視しています。
南部の地域は、他の場所よりも経済事情的に恵まれていますが、出産率は低いです。高地地域から南部地域に人が移住してきています。この地域では、金融を中心とした開発が進められています。
以上が、ベトナムの有識者の意見を交えた、各世代が影響を受けた生活者の価値観・地域での違いです。本連載では、研究で得られたインサイトをベースに、購買行動、テクノロジーの影響、家族とのかかわり、社会からの影響などをテーマに調査を行い、定量的にその内容を検証してきました。
今後も情報をアップデートし、セミナー等を通じて皆様にお届けしてまいります。
- 定量調査の調査概要
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調査地域: ベトナム全土 世代別回答者数: Gen1(n=221/男性138、女性83)、Gen2(n=485/男性198、女性287)、Gen3(n=597/男性204, 女性393)、Gen4(n=332/男性130、女性202) 調査方法: インターネット調査 調査時期: 2020年2月
米国フォーダム大学大学院修士課程修了。LVMHグループにてブランドマネージャー、PwCコンサルティングにて国内外の企業のマーケティング戦略プロジェクトに参画。その後、オグルヴィ&メイザーにて日本企業の海外ブランディングおよびマーケティングを支援するエキスポートプラクティスを起ち上げ、ジェネラルマネージャーとしてチームをけん引。現在は、マクロミルにて日本企業の海外市場における調査と戦略サポートを務める。
お客さまの課題・ニーズを伺ってリサーチの企画・提案を行います。
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