マクロミル、企業の生成AI活用実態と定着のための成功要素をレポートで公開

~ビジネスパーソンへの調査で課題と定着プロセスが明らかに~
株式会社マクロミル
(コード番号:3978 東証プライム)

株式会社マクロミル(本社:東京都港区、代表執行役社長 CEO:佐々木徹 以下、当社)は、当社のビジネスパネル1,030人を対象とした生成AIツールに関する意識調査を実施し、生成AIを組織に定着させるための分析・提言を示したレポート「企業での生成AI活用における課題と可能性 ―調査データから見える現状と定着のための4つの提言─ 」を本日公開しました。

生成AIの活用は企業の競争力を左右する重要な要素になっています。本調査は、当社のビジネスパネル※1を用いて、生成AIを導入・活用、または、導入検討中の企業に勤務している20~50代のビジネスパーソンを対象に、活用実態や現状の課題、導入障壁などの“現在地”を明らかにすることを目的に実施しました。調査期間は、2025年4月22日(火)~4月24日(木)です。調査結果とともに、生成AIの導入から定着までに必要な4つの成功要素について解説します。

■ 調査結果 トピックス

  1. 勤務先の生成AIの導入状況、「導入されている」は26.3%、「わからない」がほぼ半数
  2. 生成AIの活用促進におけるビジネスパーソンの悩みは「習得機会の欠如」がトップで33.9%
  3. 「推進部門」の設置率は75.6%、一方で「ルールやガイドライン」の整備・運用率は26.6%
  4. 個人で生成AIツールを毎日利用している人は、業務における生成AIツール利用の満足度も48.4%と高い

■ 生成AIを組織に定着させるための4つの成功要素

  1. ① 業務との接続性を高める“活用設計”と“全体最適”の推進
  2. ② ツール整備よりも、まずは“使いたくなる環境”の整備を優先
  3. ③ ルール・スキル・ナレッジの三位一体型育成体制の構築
  4. ④ トップダウンだけでなく自発的実践を支援する文化の醸成

1. 勤務先の生成AIの導入状況、「導入されている」は26.3%、「わからない」がほぼ半数

勤務先における生成AIの導入状況は、試験導入も含め26.3%でした。一方で、「わからない」が44.6%を占める現状は、社内リテラシーの低さと情報共有不足が最大の障壁であると推察できます。また、導入済み企業ではDXを会社全体で活用している割合が高く、生成AI活用の進展はデジタル成熟度と密接に相関していることがわかります。

【図表1】生成AI導入・活用状況と導入階層ごとの活用状況

【図表1】生成AI導入・活用状況と導入階層ごとの活用状況

2. 生成AIの活用促進におけるビジネスパーソンの悩みは「習得機会の欠如」がトップで33.9%

勤務先での生成AIの活用促進が進む中で、個人が抱える悩みとして最も多かったのは「スキルや知識が追いつかない・学習する時間がない」(33.9%)という習得機会の欠如でした。また、「情報が多すぎる」(25.7%)といった情報のカオス状態も障壁となり、何から始めて良いのかわからないという心理的負荷の蓄積が推察されます。加えて、「会社の方針が不明確」(20.7%)「相談できる人がいない」(18.0%)といった項目も多く、これは制度整備やコミュニティ形成の遅れを示唆しています。

【図表2】 勤務先が生成AIの活用促進を進めるうえで、個人的な悩み・困りごと

【図表2】 勤務先が生成AIの活用促進を進めるうえで、個人的な悩み・困りごと

3. 「推進部門」の設置率は75.6%、一方で「ルールやガイドライン」の整備・運用率は26.6%

勤務先における生成AIの活用体制について尋ねたところ、推進部門の設置率は75.6%と高く、企業が生成AIを重要テーマとして位置づけていることは明らかです。一方で、「ルールやガイドラインが整備され、運用されている」は26.6%、従業員のリテラシーが「高い」とされる割合も半数未満にとどまり、制度と人材の不均衡が際立ちます。この結果は、生成AI活用が企業の戦略レベルでは注目を集めているものの、従業員においては「使い方がわからない」「安心して使えない」といった運用フェーズでの停滞を示唆しています。

【図表3】 勤務先における生成AI活用体制

【図表3】 勤務先における生成AI活用体制

また、従業員の生成AIの活用状況別に、活用促進に向けた必要なサポートを比較すると、「従業員向けの段階的な研修・教育プログラム(基礎~応用)」と回答した割合は、生成AIを活用している層が28.2%であるのに対し、活用していない層では35.7%と、7.5ポイント上回りました。これは、非活用層においては単なる関心の有無ではなく、「どう学べば良いか」「何から始めれば良いか」がわからないという“支援プロセス設計の空白”が根本的な障壁である課題を示唆しています。

【図表4】生成AI活用別で見た生成AIを活用促進に向けて必要としているサポート・情報

【図表4】生成AI活用別で見た生成AIを活用促進に向けて必要としているサポート・情報

(生成AI非活用と生成AI活用の差が大きい順上位8項目)

4. 個人で生成AIツールを毎日利用している人は、業務における生成AIツール利用の満足度も48.4%と高い

個人での生成AIツール利用・契約の状況を尋ねたところ、65.6%が利用・契約していることがわかりました。勤務先ですでに生成AIを導入・活用している場合は個人での利用率も70.9%と高く、導入検討中や試験導入段階の企業に勤務する人でも過半数に達しています。業務における生成AIとの接点が、個人の利用意欲や関心を刺激している可能性を示唆しています。

【図表5】個人での生成AIツールの利用・契約状況

【図表5】個人での生成AIツールの利用・契約状況

また、個人での生成AIツールの活用頻度が高い人ほど、頻度の低い人にくらべて業務利用における生成AIツールの満足度が高いことがわかりました。継続的な活用経験が、業務での生成AI活用の効果実感や納得度にポジティブに作用していることが推察できます。個人での能動的な生成AIツールの利用習慣が、業務シーンにおける「手応え」や「納得感」を醸成していると考えられます。企業が生成AIの業務導入を進める際には、従業員の「個人活用の促進」や「利用慣れの支援」も業務活用の質的向上に直結するという視点を持つことが重要です。

【図表6】個人で利用・契約している生成AIツールの利用頻度

【図表6】個人で利用・契約している生成AIツールの利用頻度

5. 生成AIを組織に定着させるための4つの成功要素

① 業務との接続性を高める“活用設計”と“全体最適”の推進

生成AIは一部の企業で導入が進んでいるものの、多くの企業では“部分的活用”にとどまっているようです。全社での活用を阻む壁は、制度不備よりも“業務との接続不全”にあり、生成AIが従業員の実業務に結びつかないという“分断構造”が浮き彫りとなりました。生成AIを効果的に活用するためには、どの業務で、何の目的で使うのかを明確にする“活用設計”と、“全体最適”へのシフトが不可欠です。

② ツール整備よりも、まずは“使いたくなる環境”の整備を優先

生成AIの業務活用に対する関心が高まらない原因は、個人の意欲の欠如というより、興味を持てる環境が用意されていない点にあると考えられます。情報設計、制度整備、組織文化といった“環境設計”をすることで、従業員が自然に使ってみようと思える仕組みや体験が増え、定着に影響を及ぼすと考えられます。

③ ルール・スキル・ナレッジの三位一体型育成体制の構築

推進部門の設置は多くの企業で進みつつありますが、「活用方針」「適用範囲」「教育プログラム」といった会社横断の運用方針や実行基盤の整備は、依然として不十分な企業が多い状況です。属人的な活用を脱し、再現性あるナレッジを組織全体に浸透させるには、「ルール(制度)」「スキル(人材育成)」「ナレッジ共有(文化)」を三位一体で整備し、“活用しながら育てる”運用デザインが求められます。

④ トップダウンだけでなく自発的実践を支援する文化の醸成

活用促進の成否を分けるのは、“使うことの意味”を従業員自身が見出せるかどうかにあります。トップダウンでの制度設計だけでなく、業務課題に即した支援設計と、試行錯誤の結果をポジティブに共有できる風土が重要です。生成AIの活用は、従業員が主体的に「やってみたい」と思える文脈と、組織がそれを肯定的に支援する構造から広がっていくと推察されます。

【図表7】生成AIが組織に定着するための条件(課題と成功要素)

【図表7】生成AIが組織に定着するための条件(課題と成功要素)

■ 本レポートを執筆したマクロミル リサーチプランナー/生成AI活用スペシャリスト 中嶋正純のコメント

生成AIは企業活動を変革する力を持っていますが、導入には多くの課題があります。生成AIの信頼性、セキュリティ、既存業務との整合性、人材育成、組織文化の側面で慎重な対応が必要です。業務効率化にとどまらず、生成AIを価値創造のパートナーとして再定義する視点が重要であり、業務プロセスの再設計、生成AIの出力を見極める力、変化を受け入れる文化の醸成が求められます。マクロミルの調査と提言は、生成AIを価値創造のパートナーとして前向きに捉え、生成AIを単なる“導入する技術”ではなく、ともに育て、“生かす文化”へと根づかせるものになります。生成AIは企業の競争力を左右する重要なテーマであり、本調査と提言が組織の生成AI活用の進化の起点となることを期待しています。

マクロミル リサーチプランナー 生成AI活用スペシャリスト 中嶋正純

以 上

■ ※1 ビジネスパネル

職業・業種・役職・決裁権の有無などBtoBマーケティングに必要な情報を網羅したマクロミルのビジネスパーソン47万人の大規模モニターです。市場の実態把握やサービス評価など多様な課題に対応し、幅広い業界・職種のビジネスパーソンに定量調査やインタビューを実施することで、課題解決をご支援します。

BtoB市場調査 ビジネスパネル

■ レポート

レポートは以下よりダウンロードいただけます。本レポートでは、多岐にわたる調査結果や上記の4つの成功要素を踏まえた提言をまとめています。

「企業での生成AI活用における課題と可能性 ―調査データから見える現状と定着のための4つの提言─」

※本レポート内の画像・アイコンはChatGPTで生成しています。

■ 調査概要

調査名   
:生成AIツールに関する意識調査
調査方法   
:インターネットリサーチ
調査対象者   
:マクロミルが保有するビジネスパネル会員
  • スクリーニング調査:全国20歳~59歳の男女 4,567人
  • 本調査:スクリーニング調査のうち、生成AIを導入・活用している(試験導入を含む)または、導入検討中の企業に勤務している人 1,030人
  • 割付方法割付方法

    ※()はスクリーニング調査の割付人数

調査期間   
:2025年4月22日(火)~2025年4月24日(木)

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