2型糖尿病患者の4割が「血糖コントロールが不十分」と実感。要因の1つに「クリニカルイナーシャ」が浮上、治療の目標設定と治療方針説明が重要に。
(コード番号:3978 東証プライム)
株式会社マクロミル(本社:東京都港区、代表執行役社長 グローバルCEO:佐々木徹)のグループ会社であり、医療分野におけるマーケティングリサーチを専門として日本有数の医療関連モニター数を保有する株式会社マクロミルケアネット(本社:東京都港区、代表取締役社長:徳田茂二)は、2型糖尿病患者、および糖尿病内科医を対象に「2型糖尿病の血糖コントロールに関する調査」を実施しました。
調査手法はインターネットリサーチ。調査期間は 2022年5月25日(水)~6月15日(水)。有効回答数は、2型糖尿病患者202名、糖尿病内科医30名。
トピックス
- 2型糖尿病患者の4割が、自身の「血糖コントロールが不十分」と実感
- 血糖コントロールには、「患者側のモチベーション向上」と「医師側のクリニカルイナーシャ(※1)回避」が重要に
- 患者の半数以上が、「患者参加型医療」と「治療サポートアプリ」は治療に有用と回答。
血糖コントロールのモチベーション向上に - 9割にのぼる医師が、「クリニカルイナーシャ回避」は重要と認識。
患者個々に合わせた「目標設定」「治療方針説明」など
- 治療目標が達成されていないにも関わらず、治療が適切に強化されていない状態
調査背景
糖尿病は国が定める重要疾患の一つで、国内の患者数は予備群を合わせ約2,000万人(※2)と言われています。糖尿病は、1型糖尿病、2型糖尿病など、いくつかの種類に分類されますが、中でも最も患者が多い「2型糖尿病」は、遺伝のほかに食べ過ぎ、運動不足、肥満といった環境的な要因で発症します。2型糖尿病患者は、高い血糖値のまま生活を続けてしまうと、網膜症、腎症、神経障害の三大合併症や、動脈硬化進行による心臓病、脳卒中のリスクが高まるため、血糖コントロールが非常に重要です。しかし、実際は、その血糖コントロールが不十分であるケースが多いと言われています。
そこで、2型糖尿病患者と糖尿病内科医に対して調査を実施し、血糖コントロールの実態を把握して、改善案を導き出すことにしました。糖尿病内科医からはさらに詳しい意見を伺うため、マクロミルが提供するソリューション「ライブアンケート(※3)」を用いてインタビューを実施しました。医師のコメントをテキストマイニング(※4)とワードクラウド(※5)を用いて可視化します。
調査結果
1. 2型糖尿病患者の4割が、自身の「血糖コントロールが不十分」と実感
2型糖尿病患者に、血糖コントロールの実施状況について自己評価をしてもらったところ、不十分だと感じている人は合計39%(コントロールができていない+あまりコントロールができていない、計)でした。また、血糖コントロールが不十分な理由としては、「食事」「運動」など生活習慣の管理不足が要因と考える人が多いようです。
図1:血糖コントロールの実施状況と、血糖コントロールが不十分な理由
(回答者:左,2型糖尿病患者202名 / 右,「2型糖尿病患者(有効回答のみ)180名)
2. 血糖コントロールには、「患者側のモチベーション向上」と「医師側のクリニカルイナーシャ回避」が重要に
では、血糖コントロールを実行するために必要なことは何なのでしょうか。糖尿病内科医に考えをうかがいました。 患者に必要だと思うことは、「食事・運動療法」や「知識・理解」などの基本的なものに加え、「モチベーション」が挙げられました。一方、糖尿病内科医に必要だと思うことは、「患者背景の把握」や「適切な治療」「治療の説明」、「クリニカルイナーシャ」の回避などが挙げられました。クリニカルイナーシャとは、治療目標が達成されていないにも関わらず、治療が適切に強化されていない状態を意味します。医療全体が抱える課題ですが、血糖コントロールにおいても医師による積極的な治療が必要だと考えられています。
図2:良好な血糖コントロールを維持するために必要なこと ※ライブアンケート
(回答者:糖尿病内科医30名)
3. 患者の半数以上が、「患者参加型医療」と「治療サポートアプリ」は治療に有用と回答。血糖コントロールのモチベーション向上に
クリニカルイナーシャが課題となっている一方で、患者自身が医療行為に対して積極的に参加する「患者参加型医療」に注目が集まっています。
患者参加型医療の有用性について、2型糖尿病患者に尋ねると、有用だと思う人は合計75%(非常に有用だと思う~まあ有用だと思う、計)にのぼりました。患者参加型医療のメリットとしては、目標や情報を共有しながら治療ができること、コミュニケーションが取れることが挙げられ、積極的な治療への取り組みのきっかけとして期待できます。
図3:2型糖尿病治療における「患者参加型医療」の有用性とメリット
(回答者:左,2型糖尿病患者202名 / 右,2型糖尿病患者(有効回答のみ)137名)
また、2型糖尿病は、医師による診察外の時間帯における治療も大切です。そこで、スマートフォンやタブレットにダウンロードして日常的な治療に使用する「治療サポートアプリ」について、患者自身が考える有用性について尋ねました。
有用だと思う人の合計は52%(非常に有用だと思う~まあ有用だと思う、計)で、患者の半数にとどまりました。治療サポートアプリが役立つと感じている点としては、「アドバイス」が受けられることや、「励ます」「チーム」など、課題視されている“周囲とのコミュニケーション”が挙げられました。アプリの活用は、血糖コントロールが不十分である患者の“モチベーション向上”につながることが期待されます。
図4:2型糖尿病治療における「治療サポートアプリ」の有用性と役立つポイント
(回答者:左図,2型糖尿病患者 202名/右図,2型糖尿病患者(有効回答のみ)133名)
4. 9割にのぼる医師が、「クリニカルイナーシャ回避」は重要と認識。患者個々に合わせた「目標設定」「治療方針説明」など
クリニカルイナーシャ改善の取り組みについては、9割以上の医師が重要であると考えており、血糖コントロールが良好な患者をより増やしたいといった意向がうかがえます。クリニカルイナーシャを改善・防止するための取り組みとしては、「目標設定」「治療方針の説明」などが挙げられました。個々の患者の状態を把握しながら、目に見える目標や治療方針を立てていくことが必要であると考えられています。
図5:2型糖尿病診療における、クリニカルイナーシャの取り組み ※ライブアンケート
(回答者:左図, 糖尿病内科医 29名/右図, 糖尿病内科医 30名)
今回の調査結果から、血糖コントロールが不十分な要因には食事や運動などの顕在化する問題の他に、治療目標が達成されていないにも関わらず、治療が適切に強化されていない状態(クリニカルイナーシャ)があることがわかりました。クリニカルイナーシャを回避するための効果的な対応として、治療目標の設定や治療方針の決定・説明といった、患者と医師との双方向コミュニケーションが重要であり、患者の血糖値コントロールのモチベーション向上につながることが期待されます。また、「患者参加型医療」や「治療サポートアプリ」の利用などによって、コミュニケーションの機会が得られることも、血糖コントロール不良患者の治療に対する意識変化、行動変容を促すきっかけになると考えられます。
マクロミルグループは、当社が保有する多種多様なパネルから得られる様々なデータを活用し、革新的なサービスを提供することで、マーケティングビジネス領域全体にイノベーションを拡げることを目指します。
以 上
国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター ホームページより
モデレーター(司会者)が複数の参加者に対してオンラインのチャット形式でインタビューを実施し、定性データ収集と同時に、定量的なデータの即時アウトプットが行うことができる。調査実施側は、ネット状で実査への立ち合いや参加が可能。
サービスページ:https://www.macromill.com/service/live-survey/大量のテキストデータ(定性情報)から、「隠れた」情報や特徴、傾向、互いの関連性を探し出す技術
出現頻度が高い単語を抽出し、その頻度に応じた大きさで図示する手法
2型糖尿病の血糖コントロールに関する調査 調査概要
- 調査主体
- マクロミルケアネット
- 調査手法
- 患者:インターネットリサーチ
医師:インターネットリサーチ(ライブアンケート)
- 調査対象
- 患者:経口剤のみで治療する2型糖尿病患者 202名(マクロミルモニタ会員)
医師:経口剤のみで治療する2型糖尿病患者を直近1カ月間で100人以上診療した医師 30名(CareNet.com登録医師)
- 調査期間
- 患者:2022年5月25日(水)~5月26日(木)
医師:2022年6月15日(水)
【マクロミルケアネット 会社概要】
- 代表者
- 代表取締役社長 徳田茂二
- 本社
- 東京都港区港南2-16-1 品川イーストワンタワー 11F
- 設立
- 2014年12月
- 事業内容
- 医療専門の市場調査事業
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