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世代ごとの価値観・関心事の変化は育ってきた時代・文化背景の影響を大きく受けます。それらは、制度・経済・文化・技術の複合的な外部環境が影響しています。(メルマガ中国編Vol.1 2019年12月6日配信)でも触れていますが、例えばGen1は貧困の時代に育ったため「お金を稼ぐこと・贅沢をすることは悪」、Gen2以降は国の経済開放政策の影響を受け、また教育改革(1979年以降、より多くの層への大学教育への門戸が開かれた)などの影響により、欧米の文化の影響を多く受け、経済活動に対しても抵抗なく、積極的なビジネスマインドを持ってきています。また、人々の生活・価値観に大きな影響を与える政府の決定として、党が発表する「5か年計画」の指針が大きな影響要素です。過去5年にわたり健康増進策が打ち出されると、市中に健康をサポートする施設が多く敷設され、全土でのマラソン大会の実施数は年200レースのペースで増えているほどです。(コロナ対策に関しても、政府の対策強制力の強さが浮き彫りになりましたね)政府の方針の影響といえば、「一人っ子政策」(1979年から2015年まで続いた)は、子供に対する親の関心が一人に集中するという事から、教育熱が過熱する背景要因となっています。
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高齢になると健康に対する関心はどの国においても上がってくるという事はある程度共通と思われますが、中国でも、Gen1、2の健康への関心は高い傾向が顕著に表れています。有識者インタビューで分析された「Gen1の経済活動に関する保守的な姿勢」はSNSでの検索傾向にも表れており、Gen1のビジネス・勉強への関心は他の世代と比較して低い数値を示しています。一人っ子政策の影響が最も大きいGen2とGen3の「子育て・教育」に対する興味・関心の高さからもうかがえます。
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世代によって尊敬する人物に関して聞いてみましたが、ここでは自主(定量)調査では有識者の分析と合致する傾向としない傾向が現れました。Gen1は「文化大革命」の影響を受けた世代であるため、過去の文化・慣習と途絶している世代ということが有識者の分析だったのですが、歴史上の人物が尊敬の対象として最も高い数値を示しています。Gen3,4は尊敬する人物として親・祖父母を挙げていますが、経済成長を支えた世代、一人っ子政策時代に自分を支えてくれた世代として親・祖父母を見ているのでしょうか。また、中国発のグローバル企業・ユニコーン企業を輩出したGen3ではビジネスリーダーを尊敬の対象(ロールモデル?)として挙げているのが興味深い傾向ですね。
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前項で言及しているように「文化大革命」による伝統的な価値観の途絶(Gen1)から、「開放政策」による欧米文化の流入、中国企業のグローバル化によるナショナルプライドの醸成など、各世代に与えた文化(および経済)の影響は大きいです。全体の流れとしては、外からの情報が少ない時代の内向きのナショナリズムから、欧米の先進技術・文化を知った時代の欧米崇拝、それを受け入れようとする姿勢、そして欧米の文化・技術・情報を受け入れた結果として、中国の文化・技術レベルが欧米並みに(あるいはデジタル技術など部分的に独自進化を遂げている)なったことで生まれてきているGen4の「テクノロジーを中心としたネオ・ナショナリズム」があります。 生き方・働き方も古い世代(Gen1、2)の時代には、安定した仕事(鉄飯椀という)が求められていたのに対し、Gen3,4では鉄飯椀を避け、新しい働き方、生き方を求めるために様々な選択肢が広がっています。その反面、Gen3,4では一つの職業に落ち着かず、昇給とスキルを上げるために次々と職業を変える傾向が増えています。(上海など都市部での転職期間は平均19か月とも言われています)
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Gen1、2では就きたかった職業は安定した職業である官僚(公務員含む)と専門職(教師・医師・看護師・弁護士・会計士など)で50%以上を占めていました。 日本のように夢のある職業(アーティストやスポーツ選手)を上げている人は少ないようです。また、就きたかった職業で「会社員」を上げている人は全世代通じて10%台という結果でした。 一方で現実はどうかというと、、、現役世代であるGen2~4は圧倒的に会社員が多く、夢と現実のギャップは多いようですが、これは単にネガティブな側面ではなく、経済活動が自由になったことで、会社員としてよい条件で働けるオポチュニティが増えたことが背景にあるのかもしれません。
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2001年のWTO加盟を機に、外資系企業や海外ブランドが中国市場へ参入したことによって、中国国内では、体制の移行や、社会的、文化的に急速な変化がみられるようになりました。(ちなみにGen1(世代文化大革命の時)に許可されていた映画はロシアか北朝鮮制作の映画のみ。)
経済成長と外国文化は、人々の自己認識度を向上させ、それが政権の付加価値となりました。これは、明らかに若年層世代の自己表現と、その一つ上の世代の自己啓発を推し進める要因となりました。外国文化への関心には地域差もあります。一級都市(北京、天津、上海、杭州、香港、深圳、広州など、主に東海岸沿いに位置する大都市)では仕事や余暇で海外に行く人も多いため、都会化が進んでおり、西洋の価値観が他よりも浸透しています。子供を海外へ留学させる家庭も多いです。このような都市には外資系企業も多く、様々な国出身の人が住んでいるため、国際色が豊かです。つまり、ここの住人は、国際的な環境に囲まれており、その価値観に触れる機会も多くあります。
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有識者インタビューでは2001年のWTO参加以降の外国文化の流入が拡大という見解があったのですが、自主調査からもGen3が外国文化への関心が最も高いという結果が見られました。(TOP2で89.8%) 外国文化への関心は全世代を通じて高い傾向にあるのですが、今回の調査では文化のどの分野に関心があるか迄は深堀をしていませんが、世代ごとに関心の分野やどの国のどの文化という詳細に関しても、いずれ検証してみたいと思います。
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Gen1の価値観の根底にある共産主義的イデオロギーからすれば、「社会は平等」でしたが、1980年代初期には、中国の都市に新しい中流階級が生まれてきました。開放政策により都市部と農村部、沿岸部と内陸部に経済格差が生まれましたが、その後の西部開拓(内陸部の開発)に伴う経済成長により、地域的な格差は無くなりました。一方で個人間の経済格差は広がってきたのが実情です。 また、情報技術の進歩により、特に若い世代(Gen3,4)では地域による情報格差はかなり改善されたようです。男女間での平等意識に関してはGen1では問題にされることすらありませんでしたが(女性の社会に対する意見が表面化されていなかった)、教育改革で男女ともに高等教育を受けられるようになると、女性の社会進出が盛んになり、また男女ともに個人主義的な価値観を持つようになり、社会の不平等に対して問題提起がされるようになりました。
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自主調査の結果からは、Gen4が中国は経済的に不平等(Bottom2: 58%)と答えています。経済成長に伴い個人間での収入差が顕在化したことが原因かもしれません。一方で、共産主義的な価値観の中心にいたGen1がGen4に近い傾向を示しているのは意外な結果となりました。有識者インタビューから推測される背景仮説は「抑制され続けた国民は、集団や国のために自己犠牲を払う必要があった」のに十分な恩恵を受けていないという事が関連しているのかと推測されます。
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